Read Article

広告

[認知症介護実例] 「警察に突き出す」泥棒扱いされた悔しさ

広告

特定養護老人ホームの利用者の方に、介護拒否をされる方がいらっしゃいました。
その方は、男性で年齢が90歳以上の元気なおじいちゃんです。
足が不自由で車椅子生活でしたが、自ら車椅子を動かし部屋や施設を自由に移動できます。
さらに、滑舌も良く、認知症のような記憶障害があまり見られないケースです。
年齢の割に健康的な利用者でした。

しかし、彼は「排泄補助拒否」と「極端な食事介助を求める」人でした。
排泄補助を極端に嫌がり、失禁・便漏れを頑なに隠し認めないです。
そのため、介護職員は部屋を掃除する時に、空気中に飛散した悪臭と闘う日々を送ることになります。
便漏れで部屋が汚れてもその事実を認めないので、掃除のために部屋からこの男性に出ていただくのに一苦労しました。

また、上記の食事介助も車椅子を押せるほどの力があるのに食べさせてくれと大声で叫びます。
また、男性が自ら体や手を動かすため、うまくスプーンで口に食べ物を運ぶのに一苦労でした。

介護職員たちは、男性には「古き日本の男尊女卑の精神」が根付いていて、認知症によってその傾向が強まっているのではないかと考えました。
そのため、排泄関係は恥と考え、卑下する女性には絶対に認めませんでした。
また昔の女性が男性の食事を支度する延長に、食べさせるという動作があり、手を動かせるのに敢えて女性の介護職員を顎で使い、自身の威厳を守りたいと考えていると結論づけました。

男性職員には上記のケースは見られないのですが、施設の職員の男女比は、女8に対して男は2ととても少ない状況でした。
男性の職員をこの男性だけの介護に振り向けるのは無理があり、すぐに解決するべき問題でした。

この問題は男性の「男は女より強くて偉い」というプライドを利用するような言葉誘導を介護に取り入れることで解決をしました。

まず、排泄関係からです。
便漏れの事実を認めない場合は、「便漏れがないなら部屋を見せてほしい」と説得します。
こう言われるとプライドから「便漏れがあるから部屋は見せられない」と言わないと思ったからです。
部屋を掃除した後には便漏れの事実を敢えて男性に伝えないように配慮しました。
次回の便漏れ時に部屋を簡単に掃除しやすいようにするためです。
ここで「何で漏らしたの?」と強く当たると、それ以降、より強い拒否反応を見せてしまうからです。

次に食事介護ですが、敢えて食べ物を運ぶ時に、子供のように「あーん!」と子供におやつ与える様に食事介護をします。
他の利用者がいる施設のため、その羞恥心に耐えかねて、自分の力でご飯を食べてくれるようになります。
この時もご飯を一人で食べたことを誉めてあげると、本人はとても喜んで次も自分の力でご飯を食べくれます。

極端なプライドによる介護拒否は、その強い意識をうまく誘導することで、利用者と介護職員との意思疎通をうまく図られると思います。

泥棒扱いされた悔しさ

私は以前特別養護老人ホームの介護職員として働いたことがあります。
未経験歓迎という謳い文句に誘われ、体力に多少の自信があった私は何の知識もないまま応募しました。
求人広告を見て1カ月後、私はその施設の介護職員になっていました。
今回は皆さんにも知ってほしい、施設介護の辛い体験を執筆したいと思います。

私が働く施設は、重度の認知症が利用する特別養護老人ホームです。
通称特養は、グループ単位で介護支援をする施設です。
数十名の利用者と数名の介護職員が家族のような単位で活動をします。
私がその数名の介護職員として働きだした初日に、認知症という病気の特性を理解する出来事がありました。

初めて利用者と接する中で、起伏の激しい利用者に出会いました。
彼女は男性である私を大変に気に入った様子で、まるで息子のように自己紹介をしてくれました。
そんな会話をした数十分後、私は彼女から罵声と受けることになりました。
『泥棒!』
それが自分に対して言われたのを理解するのに、私は数分の時間を要しました。
数分前に、『若いのに偉い!』という誉め言葉を頂いた流れでした。
まるで緊急地震速報ような不意な出来事が発生したかように、強い違和感を覚えました。
認知症は短期間の記憶がなくなるだけでなく、妄想(物盗られ妄想、浮気妄想など)などの症状も現れます。
彼女は、私を見知らぬ男性と認知したのです。
そして、泥棒と勘違いしたのは、彼女の洋服を洗濯に出していたために起こった不運でした。
洗濯に出されたことを知らない彼女は、突然洋服が消えたことと知らない男性が現れたこと、そして感情抑制が効かない精神状態だっため、私を『泥棒!』と呼んだのです。
その出来事は不運であり日常であることを、私は先輩介護職員からフォローされました。

『いつものこと』

そう簡単に片づけられる話と、多くの介護職員は笑います。
しかし、介護素人の私にとっては、笑いごとでは済まされません。
彼女は続いて、『私の身近に警察関係者いる。お前をそっちに突き出してやる!』と叫びます。
それが事実がどうかは定かではありません。
しかし、介護経験の少なかった私は強い憤りを感じました。
給料をもらうとはいえ、誰かのために働くことに何かしらの正義感を抱いていました。
正しいことをしているのに、人を警察に突き出すという暴言を吐かれることに対して、行き場のない怒りがふつふつ湧き起こりました。
認知症の影響だと自分に言い聞かせても、その怒りは治まりません。
何かをしてやったなどという恩着せがましい感情を抱くと、こんなにもしてやったのにという恨みに変わります。
まだ、施設で介護をした経験が少なかった時期でしたので、「誰もが通る道」だと先輩方に言われましたが、これは家で介護をしている人たちにも共通しています。
私たち介護職員はお金をもらって介護をしているので、何かを言われた、された場合の心の整理は比較的容易にできるようになりますが、家で介護をされている家族は昔の思い出がある分、すごく苦しむことになります。
もし、家族介護の方の精神状態が限界を超えそうな時にはぜひ、介護のプロに相談してみることをお勧めします。

[参考記事]
「介護福祉士に聞いた②認知症の物盗られ妄想にどう対応しているの?」

URL :
TRACKBACK URL :

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top