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認知症薬の増量規定の問題。これでは症状が悪化するばかりだ

 

 医者が処方する薬は製薬会社が決めた添付文書通りの処方をしないと診療報酬が支払われません。処方した薬が認められない場合はその分の薬代は病院の自己負担になります。これは認知症薬も同じです。

 しかし、認知症薬が他の薬と違うところがあります。それは増量規定があることです。例えばレミニールの場合、初めは1日に8mg、4週間後に16mg、症状によってはさらに4週間後に24mgに増やすと添付文書に載っています。症状の進展具合は関係なく(悪化しても)、4週間ごとに薬の量が増えていきます。

 この増量規定は他の認知症薬であるメマリー、リバスタッチパッチ、アリセプトでも同じです。もちろん、この規定通りの処方しないと診療報酬は支払われません。これは大きな問題です。

通常、成人にはガランタミンとして1日8mg(1回4mgを1日 2回)から開始し、4週間後に1日16mg(1回8mgを1日2回) に増量し、経口投与する。なお、症状に応じて1日24mg(1 回12mgを1日2回)まで増量できるが、増量する場合は変更 前の用量で4週間以上投与した後に増量する。

レミニールの添付文書より引用

 通常であれば患者の症状に合わせて薬の量を増やしたり、減らしたりすべきなのに一方的に増量しなくてはいけないなんて素人が考えても変です。症状が悪化したら薬を減らすべきなのは誰でも分かります。

 医師や患者が声を大きくして増量規定の問題を厚生労働省に言わなくてはいけません。もちろん、製薬会社が決めた用法は厚生労働省に許可されているので「何か問題があるなら厚生労働省へ言ってくれ」と言われればそれまでですが、私は腑に落ちません。

認知症の進行を遅らせる抗認知症薬を規定の有効量を下回って少量投与した場合、過去3年間で全国の国民健康保険団体連合会(国保連)のうち9県が医療機関からの診療報酬支払い請求を認めない査定をしたことが、共同通信の調査で21日、分かった。26都県では、認めない査定はなかったとし、12県が少量投与を認めるべきだとするなど、抗認知症薬の扱いに地域差があった。

共同通信より引用


 製薬会社が利益のために薬の量を徐々に増やすように用法を決めていると勘ぐる医師もいますが、私もその意見に賛成です。レセプト(診療報酬明細書)を書くときに「〇〇により、薬の量を減らす」と書けば減量が認められるケースもありますが、これは手間がかかり、大病院でさえもやってくれないようです。

 なぜなら、毎日、何十人も認知症の患者を診察しているので、そこに時間を割くだけの余裕がないからです。薬を増量して症状が悪化しても見て見ぬふりをしているのです。これが社会や病院内で問題にならなことが不思議です。

 しかし、コウノメソッドで有名な河野和彦医師は認知症薬を添付文書の用法より少ない単位で処方しています。もちろん、症状が悪化したら量を調整することもしていますが、その場合にはレセプトに「〇〇により、薬の量を減らす」と書いていることは言うまでもないことです。このように認知症の患者のことを親身になって考えてくれる医師を選ぶべきです。

 もし、患者の状態を無視して、製薬会社の添付文書通りに薬を処方しているのならば他の病院に転院することをお勧めします。もちろん、認知症の人が判断するのではなく、判断力のある家族に任せた方がいいです。今回書いた記事はすごく重要なことですので、忘れないでいただきたいです。

[参考記事]
「薬(アリセプト)は認知症に効果があるのか検証してみた」

[補足]
 以下のように全ての認知症薬で増量規定が添付文書に載っております。

通常、成人にはメマンチン塩酸塩として 1 日 1 回 5 mgから開始 し、 1 週間に 5 mgずつ増量し、維持量として 1 日 1 回20mgを 経口投与する。

メマリーの添付文書より引用

通常、成人にはリバスチグミンとして1日1回4. 5mgから開始し、 原則として4週毎に4. 5mgずつ増量し、維持量として1日1回 18mgを貼付する。また、患者の状態に応じて、1日1回9mg を開始用量とし、原則として4週後に18mgに増量することも できる。

リバスタッチパッチの添付文書より引用

通常、成人にはドネペジル塩酸塩として 1 日 1 回 3 mgから開始し、 1 ~ 2 週間後に 5 mgに増量し、経 口投与する。高度のアルツハイマー型認知症患者に は、5 mgで 4 週間以上経過後、10mgに増量する。なお、 症状により適宜減量する。

アリセプトの添付文書より引用

※この記事を書いた1か月後(2016年6月1日)に増量規定が撤廃されました。

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