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介護士と認知症の人の関係性。家族の顔は忘れたけど介護士の顔は分かる

 

 認知症の人の症状は、介護系のテキストや座学で学ぶ一般論以外に、様々な症状が出現します。ときに「症状」というより「個性」と表現した方が良いのでは、と思うときもあります。

 今回ご紹介する内容は、ご家族様には複雑な心境を与えてしまいますが、日常関わっている介護士にとってはありがたいような(?)エピソードとして「家族の顔は忘れた」けど「介護士の顔は分かる」という人の事例をご紹介します。

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「家族の顔は忘れた」ため、面会はいつも「はじめまして」から

 以前、私が働いていた入所施設にS様という90代の女性がいらっしゃいました。認知症ではありましたが、性格が穏やかだったので、他のご利用者様や介護士から好かれているご利用者様でした。

 このS様の長女様は、1か月に2~3回は面会に来られるのですが、S様は残念ながら長女様の顔が分からなくなっておりました。(娘様も穏やかな方だったので、施設職員に対して娘様の微妙な心境をこぼされるようなことはありませんでしたが、内心さぞかし複雑だったのではないかと推測していました。)

 長女様との面会の度に、S様は長女様に対して「はじめてお会いする方ですか?」「どなた様でしたかね?」「(長女様がS様に対してご自分の名をおっしゃるのですが)・・・私には、そのような娘はおりません」となってしまうのです。

 穏やかな母と娘の関係性もあり、お互い口調が荒くなるなどということはありませんでしたが、面会の度に「はじめてお会いする方ですか?」と言われてしまう長女様の内心は、さぞかし複雑だったのではないかと施設職員は察してはおりました。

介護士の顔は分かる様子

 長女様の顔は分からなくなってしまっていたS様でしたが、S様も長女様も穏やかな性格なので、面会時間の経過とともに、それなりに会話が弾んでくる様子ではありました。

 面会場所は玄関付近や多目的室になることが多く、長女様が帰られるときには介護士がS様を面会場所まで迎えにのですが、このときS様はたいてい「ああ、いつものお兄さん(またはお姉さん)、今からどこへ連れて行ってくれるんですか?(居室に戻るだけなのですが、S様の毎回のセリフです)」とおっしゃるのです。

 介護士を「いつものお兄さん(お姉さん)」と表現するということは、S様は介護士の顔は分かっているのです。長女様の面会は1か月2~3回に対して、介護士はどの人も長女様よりは顔を多く合わせているので、S様から「いつものお兄さん(お姉さん)」と呼ばれることはありがたいことではありました。

長女様より「安心しています」とありがたいお言葉

 長女様の顔は残念ながら忘れていますが、介護士の顔は覚えているS様。

 長女様は次のようなことを介護士に言ってくださっていました。

 「私(長女様)の顔は忘れても、介護士の皆さんの顔をなんとなくでも覚えているのは、母が安心している証拠だと思っています。自宅では介護できない母を入所させるときは、複雑な心境でしたが、母が介護士の皆さんをお兄さん、お姉さんと穏やかに呼んでいる姿を見ると、この施設に入所させて良かったと思っています。」

まとめ

 今回は、長女様の顔は忘れてしまいましたが、介護士の顔は分かるS様の事例をご紹介しました。長女様には申し訳ないのですが、介護士にとっては認知症の人に「顔を分かっていただいている」ということは良い関係を築くことができている証です。今回ご紹介した内容が、認知症の人との関係作りの参考になれば幸いです。

[参考記事]
「ニュージーランドと日本の老人ホームの違い。認知症の症状は同じ?食事は?」

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