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認知症高齢者でも恋はする。恋愛感情が症状にプラスに働いた例

 

 老人ホームに入所中、同施設内のデイサービスに通っている利用者さんへ好意を持った結果、ADL(日常生活動作)の改善につながったという例があります。

 入所中のKさん(男性、70代半ば)は認知症ですが、恋愛感情は失っていませんでした。Kさんはある利用者さんに恋をしました。

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意欲低下の状態

 Kさんは老人ホームに入所していますが、脳血管性認知症です。左片麻痺で、車いすでの生活です。会話は、簡単な意思疎通が可能ですが、物忘れや、時間や季節感が分からないなどの見当識障害が少し目立ちます。

 車いすの自走は可能ですが、「疲れる」「押してもらったほうが早い」などと話し、すぐ自走を止めてしまいます。今現在できる動作であってもしなくなるとできなくなってしまうので、スタッフはできるだけ自走してもらおうと、声をかけます。それでも「押してくれ」と、病気のせいもありますが、意欲がないといった様子でした。

Oさんとの出会い

 施設内には、デイサービスも併設しています。知り合いがいて、老人ホームとデイサービス施設を行ったり来たりする利用者さん達も時々います。週に2回来られる、デイサービスの利用者さんで、Oさん(女性、70代前半)という方がいます。Oさんは認知症の症状はほとんど見られませんが、脳梗塞の後遺症により、Kさんと同じく左片麻痺で、車いすを使用している方です。

 Oさんは時々、ホーム(入所施設)のほうに来て、入所者さんや職員の方とも会話をしていきます。そんなOさんが、初めてKさんに話しかけた時のことです。「おとうさん、私と同じだね。(左麻痺のこと)大変だけど、頑張ろうね。私も、家に居られなくなったら、ここでお世話になるから!」と、とても明るく話しました。

 そのときKさんは、「家族と住んでいるのか?」「その体になってどれくらい?」と話していました。数分で、Oさんはデイサービスのほうに戻っていきましたが、Kさんはそれから職員に、「さっきの人はなんていう名前」「どこから来ているの」などと聞き、とても気になる様子でした。この時、恋愛感情が生まれたのでしょう。

スタッフの促しより効果的なOさんの言葉

 それからもKさんは、Oさんのことを忘れておらず「今度はいつくるんだか…」と話していました。スタッフがKさんに、「見に行ってみたらどうですか?」と話すと、「押して行ってくれるのかい」と返されました。スタッフは自走を促しましたが、『まあ今回は…ひとりで行くのが照れくさいのかな?』と思いながら、介助して行くことにしました。

 車いすを押してデイサービスに着くと、Oさんが居ました。するとOさんは、Kさんに気がつき、「な~に、押してもらってきたの」と、笑顔で話しかけました。そこから介助してきたスタッフは「会話が終わったら、自走で帰ってきてみてください。疲れたら、手伝います」と話し、その場を離れました。

 それから30分ほどたった時、Kさんはホームのほうまで自走で帰ってきました。「疲れませんでした?大丈夫ですか?」と聞くと「俺だってこのくらいできる」と、表情も明るく帰ってきました。

意欲向上につながる

 それからKさんは、自らデイサービスのほうへ自走し向かうようになりました。楽しみができた様子でした。社交的なOさんとのつながりがきっかけで、Kさんもひとりで閉じこもることなく、いろいろな方に声をかけるようにもなりました。

 また、Oさんに『絵をプレゼントする』と、紙に色鉛筆で、花の絵を描きました。少し前には、考えられないことでした。Oさんへの恋愛感情によって、意欲的になり、車いすの自走も今では普通にこなしています。

 また、今が何月なのか、何時なのかよく分からない状態が多くありましたが、Oさんがデイサービスに来るのを知るために「今日は何曜日」「今何時?」など、スタッフに聞き、知りたいという意識が高くなったように感じられました。

[参考記事]
「認知症の施設利用者からお尻を触られるセクハラに対する対応」

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