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認知症の方の不穏の原因は不安。その不安の解決方法とは

 

 Oさん(91歳・女性)はとても面倒見がよく、比較的穏やかではあるものの、他者の感情を読み取るかのように、「怒り」「悲しみ」を自分でも感じてしまう感情豊かな方でした。

 Mさん(90歳・女性)は認知症だけで介護度4が下りるほど進行をしていて、トイレや食事の方法すら分からなくなっています。ですが、人が好きで一人で居ることが嫌いという性質があります。

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不穏という名の不安

 Oさんが面倒見がよく、Mさんは一人で居ることが嫌いだったため、いつもソファに2人で座っていただいていました。たまに、二人は以下のように噛み合わない会話をしながらだんだん表情が曇っていき、不穏状態になってしまう時がありました。

Oさん
「あの人1人でかわいそうだよ」「家族が心配してるから帰りたいんだよ」「ここはどこなの?」「私のこと知ってる?」

Mさん
「どこ行くの?」「ここに座りな」「だめだよ、あっち行っちゃ」「誰も来てくれないんだよ」

 時には2人で徘徊をしながら他利用者様や職員全員に何度も聞きまわるのです。

 ユニット会議で職員に話をしましたが、誰もが「この人たちが不穏になると手に負えない」、対策どころかこの言葉しか飛び交いませんでした。

 対応の仕方が分からないため、声掛けをしても、見守りをしていてもだんだん表情が怖くなり、落ち着きがなくなってしまうため職員はお手上げ状態でした。酷いときには、窓を強く叩くため壊れてしまうのでは…と思わせるほどでした。

 私はこの状態を見て、「不穏ではなく不安なだけではないか」という考えに至りました。窓を叩く行動も「閉じ込められているという不安」からのものだと思います。

不安を取り除く

 利用者様は不穏という名の「不安」を感じ始めると、どんなに優しく、穏やかに声掛けを行っても簡単に落ち着くことはないと言っても間違いではないと思います。

 今までの対応は不穏状態が酷くなるのが嫌で話を流してしまったり、他利用者様の対応で手が回らない時には「座ってて」と声を掛けてしまうことが多くありました。

 ですが、もし自分がこんなことを言われたら嫌な気持ちになりますし、もっと不安になってしまうかもしれません。不安にさせていたのは職員だったと、自分のことのように考えてやっと気づくことが出来ました。

 その頃から、不安を取り除く方法を考えましたが、最初は全然分かりませんでした。散歩をしてみる、疲れて落ち着くまで見守りを行う、話を逸らす。いろいろなことを何度も何度も挑戦してみましたが、効果はほとんどありませんでした。ただ疲れて傾眠してしまったり、逆効果だったりと散々でした。

 そんなとき、意識して訳ではないですが、ただ隣に座って肩を抱いていたときが一番口調が穏やかになっていったことに気付いたのです。これは新しい発見でした。そこから私は普段から毎日のようにOさん、Mさんを抱きしめるようになりました。

 不安そうな顔が見えると横に座り、手を繋いだり、背中をさすったり、肩を抱いたりしながら「大丈夫」「一緒にいるよ」「寂しくないよ」と声を掛けるようにしました。こんな言い方はいけないですが、子供を慰めるように。

 自分の家族のように愛情をそそいで関係を築いていきました。その際、いけないと言われていますが、敬語は使わず家族と話すように「大丈夫だから、心配しないで」「お母さん」「かわいいな~」と身近に感じていただけるよう接していきました。絶対に笑顔で、優しく、気持ちを分かろうと努力しました。

気持ちの変化

 この接し方に変えて1ヶ月、私が勤務している日に不穏になることが減っていきました。不穏になっても傍に座っているだけで落ち着き、笑顔に戻るのが早くなっていきました。

 他職員にも行ってもらったところ、Oさん、Mさんともに2、3ヶ月で不穏になることが減っていきました。認知症の方の不穏は「不安」であることが分かった今では、どんな利用者様に対しても親身に家族のように接するようにしています。認知症という病気にかかっても、人としての感情に変わりはないことを胸にしっかり刻んで仕事をしています。

[参考記事]
「デイサービスを利用する認知症の人が不穏になる時間は14時」

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