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通所介護施設にクレームをつける認知症高齢者の家族

 

 通所介護(デイサービス)を利用していたYさん(70代後半女性)は、身体のADL(日常生活動作)には大きな問題点はありませんが、認知症と診断され、要介護1です。

 Yさんは若いころに結婚していましたが、のちに離婚され、娘さんと2人暮らしの家庭環境でした。娘さんは仕事をしておらず基本的に家におり、通所介護施設への送り出し、お迎えは対応できるとのことでした。

 Yさんが通所介護を利用された当初、社交性もあり、笑顔のよく見られる方で、職員も問題なく接していけると考えていました。

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通所介護でのYさんの様子

 Yさんは身体に問題点はなく、とても元気な方でした。そして笑顔で職員に対して
「お茶配り手伝うよ」
「洗濯物たたむの手伝うよ」
と積極的に声をかけてくれました。

 最初は職員も断っていましたが、身体を動かす運動にもなるということで、Yさんにお手伝いをお願いしていました。Yさんが通所介護を利用された日は、それらを手伝ってもらうことが日課になっていました。

家族からのクレーム

 利用から数回経ったある日、Yさんの家族から連絡がありました。

「お母さんに無理やり仕事させてるってどういうことですか?」

 職員が話を伺うと、Yさんは通所介護利用中は笑顔で手伝ってくれるものの、家に帰った途端に娘に愚痴を言っていたとのことでした。
「今日もデイサービスでお茶を配らされた」
「今日もデイサービスで洗濯物をたたむことを強要された」

 Yさんの娘さんに事情を説明しても、疑惑の疑いは晴れません。「みんなにあそこのデイサービスはひどいところだと言いふらしてやる」と一方的に声をまくしたてて訴えてきました。職員も困り、一旦ケアマネジャーに報告し、意思統一が行なわれました。

Yさんの家庭事情

 ケアマネジャーから詳しくYさんに対する報告が行われました。Yさんは社交的で、外での評判を気にする反面、家庭内では神経質で、鬱を発症していたそうです。そして娘さんにもきつく当たり、娘さんも鬱を発症していたという話でした。

 また、通所介護を利用することを極端に嫌がっていたYさんでしたが、娘さんのことを考えると少しでも休める時間を取ってもらいたいという考えから、Yさんに対して週1回の通所介護の利用を提案したとのことでした。

 それらの事情を踏まえて、職員の対応方法を話し合いました。

1.Yさんは妄想癖があり、作業を手伝ってもらうことはさらに関係の悪化につながりかねないので、手伝いをしてもらうことを止める。

2.娘さんに再度通所介護施設に来所してもらい、一日を通じて様子をみてもらってはどうか。

以上の2点から試していくことになりました。

来所を拒否する娘さん

 1に関しては、職員側も気を遣いました。今まで手伝って貰っていたことをお断りするわけですから、Yさんを傷つけないように言葉を選びながらの対応となりました。最初は不振がっていたYさんでしたが、次第に自発的に声をかけてくることはなくなりました。代わりに他の利用者様と会話して過ごされていました。

 2に関しては、あんなに攻撃的だった娘さんでしたが、その後職員との接触を避けるようになりました。送迎時にも顔を見せなくなり、Yさんがそのまま一人で帰るようになりました。

 なかなか娘さんと連絡がつかない状態になった為、ケアマネージャーにお願いすることにしました。後日、ケアマネージャーからの報告によると、娘さんは攻撃的になってしまった自分が本当に嫌になり、職員に申し訳なくて会いたくないと言ってきたそうです。こちらとしても手のうちようがなく、様子をみることしかできませんでした。

娘さんが来所される

 それから数ヶ月が経過し、Yさんも通所介護の利用に関してだいぶ慣れてきた様子でした。

 ケアマネジャーから連絡があり、娘さんが一度来所したいということを伝えてくれました。娘さんが来所され、職員のみなさんにとお土産を持ってこられました。当時の会社方針で、お土産物はいただけないという趣旨を伝え、気持ちだけで十分ですと言いました。娘さんは鬱病のせいで迷惑をかけたことをお詫びして帰られました。緊張からか、娘さんは声が震え、手も震えていました。

 その後、少しづつですが、娘さんも送迎時には顔をだしてくれるようになりました。

おわりに

 信頼関係というのは、築くのは難しく、崩れる時は簡単に崩れてしまいます。特に家族は本人の話を真に受けてしまう傾向があります。職員は利用者様との関係はもちろんのことですが、家族との信頼関係も築いていく必要があります。

 今回のケースでは娘さんが突発的に攻撃したことを反省し、自ら歩み寄ってくれましたが、場合によっては関係の修復が不可能になってしまい、利用を中止してしまう時もあります。

 大切なポイントは、職員が相手の行動に動じないことです。相手が感情的になった時に、こちらも感情的に対応してしまうとさらに悪化してしまうことがあるので、冷静に一旦距離を置く対応を心がけることが大事だと考えます。
家族との日常のコミュニケーションも大切にしておきたい、そんな事例でした。

[参考記事]
「デイサービスを使うと薬の効果が高くなるのか」

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