認知症を診断する際には「認知症の診断方法はどのようにするの?」で説明したように「問診」「認知症テスト」「画像診断」を行ないます。今回はこれらの検査以外の「血液検査と遺伝子検査」にスポットを当てて説明していきます。
まず初めに血液検査について説明します。
①血液検査
血液検査ではMCIと呼ばれている認知症予備群(軽度認知障害)であるかを調べることが出来ます。アルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドβというたんぱく質が溜まることが原因であると「認知症の原因疾患の代表的な4種類」でお伝えしましたが、このアミロイドβを排除するタンパク質の蓄積で軽度認知障害を判断します。
アミロイドβは通常であれば排出されたり、無害化されたりして、脳がダメージを負わないような仕組みが備わっているのですが、この排出させたり、無害化させるのもタンパク質です。そのタンパク質はアポリポタンパク質、トランスサンレチンタンパク質、補体タンパク質と呼ばれています。ですので、これらのタンパク質の量を調べることでアルツハイマー型認知症かどうかを判断できるわけです。
この検査方法は筑波大学病院精神神経科の朝田隆教授が開発した技術ですが、精度は約80%です。肝心の費用ですが保険が効かないため約3万円です。この血液検査は全ての病院で受けられるわけではなく、まだ一般的ではありません。
一般的に「もの忘れ外来」などで行われているのが「普通の血液検査」です。これは身体的な異常が認知症に関係しているのかを調べます。例えば検査項目はコレステロール、血糖、ビタミンB12の数値などです。ビタミンB12の検査がなぜ必要かを説明しますとこのビタミンが少なくなると記憶障害などが起きる場合がありますので、これが極端に少なくないかを調べます。
②遺伝子検査
先ほどアルツハイマー型認知症は脳内にアミロイドβという蛋白質が溜まることが原因であるとお伝えしました。さらにこのタンパク質を分解、無害化させるタンパク質としてアポリポタンパク質も紹介しました。アポリポタンパク質はさらに作用の違いにより「アポリポタンパク質A」「アポリポタンパク質B」「アポリポタンパク質C」「アポリポタンパク質D」「アポリポタンパク質E」の5つに分けられます。
今回紹介する遺伝子検査はアポリポタンパク質Eの遺伝子である「アポリポタンパクE」を調べます。アポリポタンパクEの遺伝子型はさらにアポリポタンパクE2型、アポリポタンパクE3型、アポリポタンパクE4型に分けることができ、この内アポリポタンパクE4型が多いほど認知症のリスクが高くなります。アポリポタンパクE3型は特にアミロイドβタンパク質を分解、排出する作用が強く、逆にアポリポタンパクE4型はアミロイドβタンパク質の沈着を促進する作用があります。それをこの遺伝子検査で調べることが出来るのです。
費用ですが保険が効かないため約2万円です。血液検査や遺伝子検査のメリットはCTのように放射線を使用することがないので、被爆の危険性がないことです。
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