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認知症発症のきっかけになった出来事とは

 

この記事は介護経験のある女性に書いていただきました。

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 私が18歳の頃、曾祖母は認知症を発症しました。80歳でしたが年相応のおばあさんでした。若い頃は嫁いびりに事欠かない人で、私の祖母や母は逆らえない存在でした。しかし、曾祖母は70歳を過ぎると特に目立って嫁いびりをすることもなくなり丸くなったといわれるまでに落ち着いていたと思います。そんな曾祖母の認知症が発症したきっかけになった出来事がありました。

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認知症発症のきっかけになった出来事

 曾祖母は私の曾祖父の後妻で、曾祖父が38歳で前妻を亡くしたあとに嫁いできました。曾祖母は三人子供をもうけましたが、末娘はお金に汚く、よく揉めては父が仲裁に駆り出されたそうです。そんな彼女が自分の実母の年金に手をつけるのは時間の問題でした。

 元々はお金を使い切ってしまう曾祖母でしたが、葬儀まで父や母に迷惑をかけたくないと貯金をこつこつ貯めていたそうです。それは60万程になっており、それをうっかり自分の実妹に話してしまいました。そのまま、その話が末娘に伝わるところとなったのです。

 末娘は「嫁に使われる前に下ろした方が良い」と曾祖母にアドバイスして、全額現金で枕に隠すという誘導をしました。そして、末娘はそのお金をそっくりそのまま持って行ってしまいました。私たちがその出来事を知ったのは泣きながら通帳を見つめる曾祖母を見つけた時でした。いつもは気に食わないことがあると泣き叫ぶ曾祖母は笑いながら涙をこぼし、「盗まれたんじゃない、A子にあげたんだ」と言っていた姿はとても切なく悲しいものでした。

症状の悪化

 次の日から曾祖母の症状はみるみる悪くなっていきました。それは誰が見ても明らかでどうすることもできず私と母は呆然としました。まず情緒が不安定で、泣く、叫ぶ、物を壊して暴れます。時折通帳を見ては母に「お前が盗った」と言いがかりをつけていました。また「子供たちにシャンプーを盗まれた、たくさん減っている!」といった物盗られ妄想に振り回されていました。しかし私たちはまだ認知症が発症したと認識できず、愛娘の裏切りに情緒不安定なんだとばかり思い込んでいました。

 また悪い時は重なるのもで、母の実母が末期がんで倒れてしまい余命いくばもなく、家庭内はいつもと違う雰囲気になっていました。そうすると曾祖母と接する機会が家族それぞれ少なくなっていきました。

 寂しさが認知症の発症に拍車をかけてしまったのか、母と私の顔を見れば声を荒げたり物を壊したりするようになりました。会話の受け答えに変なところはなく、そもそもが興奮した状況で話をしているため会話からの変化を見つけることはできませんでした。

 数か月が過ぎ我が家は混乱していましたが、そんな中ついに母の実母が亡くなりました。葬儀の日、いつ曾祖母の状態が変化するかわからなかったので、私は参列せず曾祖母と留守番をしていました。何度か母の所在を聞かれたので正直に葬儀に出ていることを話しました。

 2~3度聞かれ、その都度答えていたのですが、大好きな祖母の葬儀に参列できなかった思いからつい強い口調で返してしまったところ、曾祖母は暴れ出し、手当たり次第放り投げ出しました。「おらのことなんてどうでもいいんだ!」などと叫んでいたので寂しかったのだろうと思います。葬儀の最中だったので助けを呼べそうにないと考えた私は、曾祖母の孫にあたる12歳年上の男性を呼びました。すぐ駆けつけてくれ、それだけで曾祖母は大人しくなり、今までが嘘のように穏やかになりました。

 数時間後葬儀を無事に済ませた家族が合流し曾祖母も落ち着きを取り戻しました。この日から私は曾祖母が認知症なのでは?と素人ながらに感じ始め、相談しましたが、父母は取り合ってくれませんでした。しかし日常に戻り始めたかと思ったいた父母はどんどん進む曾祖母の認知症に悩まされ続けることになり私の日常も崩れていったのでした。

[参考記事]
「認知症の物盗られ妄想にどう対応しているの?」

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