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認知症による物盗られ妄想に対する対応と接し方(実例)

 

 私が勤める施設にはFさん(87歳 女性)がいます。FさんはADL(日常生活動作)は非常に良く、シルバーカーを利用し、しっかりと自立歩行をしていますし、排泄も入浴もすべて自分で行えます。以前自宅で転倒により、大腿部の骨折をし、リハビリによってシルバーカーによる自立歩行ができるまでに回復しました。

 家族が仕事で家をあけると一人になってしまい、心配なので入居になりました。しかしFさんの中のあるスイッチが入ることにより、突如豹変してしまうのです。それは「物盗られ妄想」です。物盗られ妄想は認知症の方にはよく見られる症状で、本人は盗られたと思っていても実際にはどこかに自分で隠していて、その隠したものが探し出せないというものです。

 他の人(施設の場合、他の入居者)にも迷惑がかかるというデリケートで対応が難しい症状の一つです。先ほどまでとても穏やかな表情でお話をしていたのですが、突然大声で「私の財布がない!あなた、私の財布盗ったでしょ!」と騒ぎ出すことがあります。

 その後、ご本人と一緒に居室内を探してみると枕の下などに財布はきちんとあります。財布を見つけるとFさんは笑顔になり、「ありがとう」と言ってくださいます。

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物盗られ妄想に対する協議

 なぜこのような盗られ妄想が起こるのか。認知症だからということを論点から外し、スタッフで協議し、対応を考えてみました。

 まず原因の考察をしました。
〇寂しさからくるものではないのか

 入所する前は娘様とそのご家族と賑やかな毎日を過ごしていたFさん。入居し、一人でいる時間が増えたので味わったことのない寂しさから騒いで気を引こうとしているのではないだろうか。

〇次に居室内のデザインがよくないのではないか

 デザインというと大げさかもしれませんが、Fさんの居室はとにかく物が多く、あまり整理整頓が出来ていないのです。整理整頓が出来ていないと認知症ではなくても、どこに何があるか分からなくなりますが、認知症であれば余計混乱することは容易に想像できます。

 そこで対策としては、
〇定期的な声かけを徹底しました。

 もちろん普段からお話はするのですが、もう少し時間間隔を短く、居室を覗いて挨拶するだけでも良いのでFさんと関わりある時間を増やすという対策です。

 FさんはADLは良くても認知症ですので記憶が曖昧な部分はありますが、何度も何度も声を気長にかけることによって、ここは賑やかでアットホームな場所なんだということを印象付けることが目的です。

 その他にも個室でFさんと一緒に食事をしたり、外への散歩にも積極的に誘いました。

 そうすることによりFさんの中で少しずつ寂しさが薄れていけばと考えました。

〇さらにご家族の許可のもと、居室の模様替えをしました。

 思い出のある物などはそのままにシンプルな居室内にすることにより、物を無くすという意識を薄れさすことを目的としました。また、Fさんが財布などを隠した際に一緒に探しやすいですし、隠し場所を少なくさせることも目的となっています。

 このような取り組みを行ったことにより、Fさんの物盗られ妄想はすごく改善されたとは言えませんが、以前より少なくなりました。もちろん今でも症状が出るときはありますが、隠し場所も明確になり、すぐに対応できる体制が整いました。

 認知症だからと諦めることはぜず、まず考えられる原因を探してみましょう。そして効果がないと決めつけず、チャレンジしてみることをおすすめします。時間をかけて根気よく対応していくことで開ける道があると思います。

[参考記事]
「認知症の物盗られ妄想にどう対応しているの?」

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