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0時のAさん(認知症)と4時のBさん(認知症)の切ない物語

 

 特別養護老人ホームで介護職員をしていた頃のお話です。

 Aさんは80代女性でアルツハイマー型認知症。時々物忘れはありますがとても社交的で、日中も他の利用者さんとお話されたり、歌や踊りが大好きでレクリエーションにも積極的に参加されています。洗濯たたみなども積極的に手伝ってくださいます。

 Aさんは夕食後しばらくして就寝されますが、深夜0時と2時の巡回時や夜中、他の入居者のためのナースコールが鳴った時には必ずフロアに出てこられます。「まだ夜中なのでお休みください」というと「よく寝てきたから大丈夫、あんた休まれ」とフロアを忙しく歩かれます。

 Bさんは90代女性でアルツハイマー型認知症。長年自営業で店の看板として働かれましたが、お金の計算ができなくなり店に出れなくなってからドンドン認知症が進み入所となりました。

 日中はフロアにてニコニコ座っておられますが職員を見つけると「山田です。ここどこかね。なーんも分からん。ここにおっていいがいね。」と何度も言われます。

 夕食後すぐ就寝され朝は4時になると必ず「おはようございます。山田です。遅なったね。」と出てこれれます。「まだ早いので皆さん寝ておられますよ」というといったん部屋に帰られるも3分後「おはようございます。」これを何度でも繰り返し、ほぼ毎晩です。そのせいで午後からはフロアでウトウトされることが多いです。

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それぞれの対応を検討

 朝の申し送り(夜勤との引き継ぎの報告)では「0時Aさん徘徊。4時Bさん何度も起きてくる」この報告はAさんは2から3日おき、Bさんはほぼ毎日です。日誌に定型文で入れておいてもよいくらいです。

 そこで、それぞれの原因を考え、対応策を考えてみました。

〇Aさん、一見昼夜逆転のようですが、日中は活動的なので、昼夜逆転ではないです。とすると「就寝時刻が早すぎるから夜中に起きてくるのか」と考え、寝る時間を遅らせてみるも深夜0時にはフロアに出てこられます。お腹が空くのかとおにぎりを勧めるも「大丈夫、いらんよ」と言われます。

 巡回時の足音が気になるのかと時間をずらしてみたところ、巡回に合わせて出てこれました。やはり巡回の音で目が覚めるのかと「起こしてしまってごめんなさい」というと「大丈夫、あんた休まれ」と。そしてAさんは巡回が終わると部屋に戻られるのです。

〇Bさん、日中のウトウトを見かけたら、お散歩など気分転換をしてみたり、睡眠時間を遅らせてみるもやはり4時には起きてきます。お腹が空いているからかと思い、おにぎりも出してみましたが、ぺろりと食べられ「ご馳走様」と満足そうなので、トイレ誘導後部屋にお連れするも3分後にはやはり「おはようございます」と出てこられます。

 職員会議を行って対策を話し合いました。

 ある新人職員が「おふたりは本当に徘徊なのですか?何か意味があるのではないでしょうか」と言いました。そこで、何か解決の糸口があるかと思い、親族の方にAさん、Bさんの生活習慣や昔のお仕事について話をお伺いしました。

 そうすると、Aさんは以前、バリバリの看護婦長さんでした。Bさんは自営業でお魚屋さんでした。Aさんは夜勤をしていると思って夜間、フロアに出てきていて、Bさんは店をあける準備のため朝4時に起きてきていたのです。お魚屋さんは仕入れをしなくてはいけなくて、朝が早いそうです。そうです。認知症になっても残る生活習慣だったのです。

 それからはAさんには夜の巡回を一緒に回っていただくことに。回り終わると「Aさん休憩時間ですよ」と言うと部屋で休むようになり、「今日は夜勤お休みです」と寝る前にお伝えすると朝までぐっすり寝てくれるようになりました。

 Bさんには「朝のお店の準備します」と言って、テーブルふきをお願いしました。朝早くて皆さんまだ休まれているからと職員に「しーっっ」とゼスチャーしながらニコニコしながらテーブルをふかれます。

 その人らしさに目を向ける。それだけで何とか部屋に戻っていただこうとしていた「いたちごっこ」も「お疲れ様です。ありがとうございます」に変わりました。

 それからは朝の申し送りの時には「Aさん、夜勤巡回されました。Bさん、お店の準備されました」に変わりました。そしてお二人のお仕事のお休みの日も少しづつ増えました。

 いくつになられてもとても働きもののお二人のお話ですが、私はなんか切なくなりました。昔はバリバリ働いて家族を支えてこられた方が介護施設に入り、しかもその生活習慣が抜けきらずにウロウロするようになり…。

 よく、徘徊には目的があると教科書的には言われていますが、今回の出来事で本当に腑に落ちました。周りから見ると徘徊に見えるけど、本人からしたら「〇〇するため」という目的がある。Aさんは看護師として巡回、Bさんは魚屋さんとして出勤。

 症状ではなく、その人自身をしっかりと見ることが職員としての私の役割なんだと固く決心したことを今でも思い出します。

[参考記事]
「[実例]老人ホーム内での徘徊に対する介護職員の対応が素晴らしい」

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