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息子の意向で認知症の告知をしないで施設に入居した54才の女性

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今回の記事は介護施設で働く介護職員(介護歴10年の女性)の方に書いていただきました。
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Aさん(女性)は54歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。
それまでは一人暮らしをされており、近所に息子様夫婦が住んでいました。
昼間は寿司屋、夜はスナックでアルバイトをしていましたが、徐々に注文ミスをする、無断欠席をする、職場に辿り着けない等といった記憶障害や見当識障害等が出始め、心配された息子様が脳神経外科へ一緒に受診し発覚しました。
認知症の発見は初期の段階でしたが、予想外に認知症の進行が早くすぐに一人暮らしは困難な状況となり、翌年には特別養護老人ホームに入所される事となりました。
ここで問題となったのが、息子様のご意向で「アルツハイマー型認知症である事を本人に知らせない」という事でした。
理由は、「頑固で気の強い母はきっとまだ(認知症を)受け入れられないだろうし、一人で何でも出来ると言い張り、施設入所を拒否して逆効果になるだろう」との事でした。

特別養護老人ホームに入所

そこで私たちは息子様と話し合い、Aさんに「住み込みで働きに来ていただく」という設定で施設に慣れて頂くアプローチを始めました。
最初は施設内を見学して頂き、スタッフも自己紹介していきます。
「住み込みで働いていただく」設定とはいえ、私たちにとっては当然「入居者様」ですので、こちらからは何か特別に仕事内容を提案したりはせず、始めは環境に慣れていただく事を一番に関わっていきます。
そのため、比較的自立されている方が多い少人数のユニットに入居して頂き、職員も固定職員にしました。

「住み込み」ということに関しては、夜勤の職員がいましたのですんなりと受け入れてくださいました。
また、生活リハビリの一環として、職員と一緒に洗濯物を干したり、食器洗いを手伝って頂く等の役割作りをしていくことで、それが「Aさんの仕事内容」と受け入れてくださるようになりました。
またAさんも寝たきりの方の体を優しくさすりながら「何かしてほしい事があったら私たちに言ってね」等声をかけて回られ、段々と馴染んでこられたご様子でした。

認知症が進行する

しかし、認知症が進むにつれて「忘れて分からなくなっていくことが分かる」という大きな不安からうつ症状になることもありました。
ある日、やり場のない不安や怒りが爆発し、「私はいつまでここにいなきゃいけないの、もう帰ります」と職員の制止を振り切り走って出て行かれた事があります。
すぐに事務スタッフに応援を頼み、顔なじみの職員と事務員の二人体制で後を追います。
すぐに声をかけては逆効果と分かっていたので、Aさんに危険がないように見守りながら、しばらく見守ることにしました。
1キロほど歩いたところでふと立ち止まったAさん。
どこに行けばよいか分からず、怒りの表情から段々と不安そうな表情に変わっていくのが分かりました。
そこで、事務員に迎えの車を手配してもらい、顔なじみのスタッフが偶然を装って話しかけます。

「あら、Aさんじゃないですか?こんにちはー。こんなところでどうしたの?」

すると顔なじみのスタッフに安堵された表情を浮かべたAさん「あら、あなた。良かった、少し道に迷ってね。」と話されます。

そこで、
「この辺は道に迷いやすいんですよ。ちょうど今から出勤だったんですよ。良かったら一緒に行きましょうよ」
とお誘いすると
「そうね、そうしようかしら」と応じてくださいました。
帰りの道中、普段ゆっくりお話しする機会があまりなかったこともあり、Aさんとゆっくりお話しをしながら帰ると、Aさんは少しずつ今感じている不安や息子様を心配されていることなど心境を語ってくださいました。
私たちはAさんがすっかり施設に馴染まれたと思い込み、業務の忙しさから関わりをしっかり持てていなかった事実にこの事をきっかけに気が付きました。
そこで事務員や他の部署にも応援を頼み、毎日の関わりを増やしイベントなどにも積極的に参加をすすめていきました。
こうして、より密な関わりを作っていくことで、Aさんの精神状態は徐々に落ち着いてこられました。
また、月に1度、1時間程顔なじみの職員と外出し、カフェなどでゆっくり過ごして頂く時間を作るようにしました。
Aさんはこの日を「休日」と呼ばれ、今では楽しみな恒例イベントとなっています。

[参考記事]
「認知症だと本人に告知すべきか」

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