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認知症とアルコール依存症を持つ人への対応

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 今回は認知症とアルコール依存症の症状を持つ男性Aさんの話です。その方は私がショートステイ施設で勤務している時に出会った方でした。Aさんは昔医師だったこともあり非常にプライドが高く、言葉使いに気をつけるなど、対応に神経を使う必要がありました。

 Aさんはアルコール依存症と認知症を併発しており、家族がどうしても立ち行かなくなった時の数日程度の依頼だったので、長期で継続的にケアというわけではありませんでした。

 それはケアマネジャー曰く、「本人が暴れるため家族は疲弊しているものの、どうやっても長期入所は難しい」とのことでした。アルコール依存症の診断が下っているので医療サービスも受けれるはずなのですが、Aさんを受け入れるところがないというのが現状でした。私たちも他の利用者様に影響がないよう、その場しのぎのケアを強いられていました。

 ご家族はウイスキーを瓶でご用意し、「夕飯時に一杯だけ水割りを提供してほしい」「本人の意思に従って、見守ってほしい」という特別な対応を希望していました。これは私でも経験したことがない異様なケアでした。

 アルコール依存の方に会うのは2人目でしたがこんなにコントロールされていない方にお会いするのは初めてで、動揺を隠すことだけで精一杯でした。

認知症なのかアルコール依存症なのか

 何度か施設を利用していただくうちに職員たちもAさんの存在に慣れてきました。Aさんがショートステイを利用する時には完全個室ですので部屋の準備をして、その後荷物の搬入、そして入浴と夕食のお世話をさせていただいておりました。夕食時には必ずお酒を出すのですが、お酒のおかわりを聞かれても「切れました」の一点張りで初めのうちは上手く回っていました。

 しかしある時、私が勤務していない夜勤で男性職員が殴られたとの報告がありました(私が勤務する昼勤の頃にはすっかり落ち着いた表情で新聞に目を通していました)。職員もイライラを隠せない様子でしたが、一体何があったのか、どんな対応だったのかを聞きましたが「いつも通りの対応」なのです。これでは何を地雷として興奮したのか分かりません。

 職員の対応は本当にいつも通りのやり方だったのか。それともアルコールを一杯しか飲ませてくれないことからくるアルコール依存症のイライラのせいなのか。認知症の周辺症状からくる暴力なのか(参考記事「認知症の人の暴力行為にどう対応しているの?」)。色々、考えましたが、結論は出ませんでした。

アルコールを求める姿

 Aさんのご家族が「アルコールを欲する気持ちが落ち着いた」と言っていた日はお酒を持ち込まずショートステイを利用しました。

 それは2月の寒い日でした。私は入浴介助が一段落し、食事介助に向かうところで、半袖短パンという軽装でした。なぜか2階のフロアにいるはずのAさんが私の前を横切りました。私は世間話の振りをして近づき、どこへ行くのか聞くと、施設に来る際にコンビニを見かけたので、そこへ行くのだとしっかり財布を持っていました。

 それを聞いた私は事務所に急ぎ、止めると暴れてしまいそうなので、付き添う旨を上司に報告しました。上司は2人体制で追いかけることを決め、一人は車を運転し、もう一人(私)は歩いて付いて行くように指示をしました。私には連絡用に携帯電話を渡してくれました。

 Aさんは私が半袖短パンなので「寒くないの?帰りなよ。」と話しかけてくれたり、私もAさんに質問したりして、一見穏やかに散歩をしていましたが、実際1キロほどを歩くことはAさんには無理に近く、時折転びそうになりながら歩きました。

 私が160センチ弱、Aさんは170センチ後半でがっしりした体形でしたから転倒や暴れ出した時の対処で考えると役に立てたかどうか疑問でしたが、目的のコンビニまで辿り着き、目的のお酒と私へのまんじゅうを購入したところで、もう歩くことができなくなったようでした。そこへ車を運転している職員がやってきて偶然を装い車で施設まで送っていきました。

 Aさんがいたフロアの職員は「Aさんが抜け出したことに気が付かなかった」と言っておりましたが、これは明らかに手抜きだと私は感じていました。「本人の意思に従って、見守ってほしい」ということは家族が希望していたことですが、これは「放っておいていい」ということではありません。こういう無関心の態度が職員への暴力につながったのかもしれません。

対応しきれない症例

 このようにアルコール依存症で認知症を併発というのは通常の介護施設では対応が難しいと思います。そこをどうやって乗り越えるのか?もしくはリスクマネージメントという意味で引き受けないと判断するのか?ということになると思います。今回は私たちが引き受けないと家族が苦しくなる事案でしたので、なんとか私たちの力でカバーしたいと考えましたが、対応しきれないこともあると分かり、いい経験になりました。

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