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失認などにより食事ができない認知症の人への対応

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 食べ物であると認識ができなくなる失認や食べ方が分からなくなる失行を抱えると当然、食事をすることが困難になります。今回はその対応についてお話しします。

 K様(女性95歳)は、肩に障害のある長男が自宅での介護を続けていくのが困難になったのを期に、介護付き有料老人ホームへ入居されました。K様は、3男2女を育て、漁業に携わる夫を手伝いながら、陽気な性格から地域の方々からも慕われてきたそうです。

 80歳代の時には、認知症の症状がありながらも、お孫さんの赴任先である米国へ旅行されるなど、アクティブに生活されてきました。

 一緒に生活されてきた長男様は、肩に障害がありながらも介護生活を続けてこられましたが、長男様自身も年齢を重ね、またK様の認知症の症状もひどくなり対応が難しくなったことから施設へ入居されることになりました。

食事量の減少に対する対応

 K様が入居されたのは春でした。入居時の情報として、夏になると、毎年、食欲が落ち、それに伴い体重も減少する傾向にあることは分かっていましたが、まずは状況を見守ることにしました。

 外気温が上がり、真夏になるころ、やはり食欲の減退傾向が見られ始めました。それまでは特に食事を残されることもなく、また、介助も必要とせずに食事をされてきたK様でしたが、徐々に食事を受け付けなくなっていきました。

 軟飯にお茶をかけ流し込むように食べるようになり、おかずにはほとんど手を付けられなくなりました。こちらから声掛けをし、おかずを食べていただくよう促すと、一口にも満たない量をお箸でつまんで食べるといった様子でした。また、デザートやおやつに関しては、声掛けにて促せば、好んで食べられる様子が見られました。

 このことを受け、まず、毎日のミーティングにて話し合いが行われました。K様の普段の様子から、認知症の症状の進行が見られました。声掛けなしではお米以外には手が伸びないことから、「認知症の症状によりお米以外のオカズを食べ物であると認識できていないこと(失認)」もしくは「視空間失認により、目の前のお米以外は視界に入らないこと」が考えられました。そして、十分に咀嚼されている様子が見られないことから、「噛むという行為を時に忘れてしまうことで、食事が進まないこと(失行)」も議題に上がりました。

失行とは、体の機能には何も問題がないのにもかかわらず、今までは毎日普通に行っていた行動が出来なくなることを言います。脳の気質的病変が原因で、運動麻痺や知覚麻痺がないのに、的確な行動が出来なくなるのです。

失認は、後頭葉や側頭葉などの損傷が原因で起こります。視覚・嗅覚・触覚には何の問題もないのにも関わらず、物を認識できなくなることを言います。今までわかっていた人や物がわからなくなるなどの症状がみられます。

[参考記事]
「認知症の中核症状とはどのような症状なのか」

 このことへの対応として、「声掛けを増やすこと」「失行の対策として食事介助をしていくこと」「視空間失認の対策としてお皿を視界の中に入れる」が介護職員に申し送られました。K様を食事介助する都合上、K様には食事をするテーブルの移動をお願いしました。他の方との兼ね合いで移動をお願いしたのですが、これまでとの変化に戸惑いがあったのか、食事がさらに進まなくなってしまった様子がみられ、もとのテーブルへ戻られるといった経緯もありました。これは、K様に声をかけてくださる他の入居者様と違うテーブルになってしまったことがきっかけになったと思われました。

 もとのテーブルに戻り、介護職員の食事介助、お皿の移動などの補助や他の入居者様からの励ましなどもあり、一時は食欲を取り戻されたK様でしたが、また徐々に食欲は減っていき、職員の介助でも食事を受け付けなくなっていきました。長男様より、毎年夏には、ゼリーやスイカなどを好んで食べられていたとのことを伺い、栄養補助食品のゼリーや栄養士手作りのゼリー、スイカなどのフルーツも積極的に食事のメニューに加え、食べていただけるように工夫しました。また、他の入居者様が食事を終えられ、談話を始めてしまうと、K様も話の輪に入ってしまい、それ以降食事が進まないという傾向も見られたため、そういった場合には、お話を終えられた後、居室にて食事の続きをしていただく対応も行いました。

 このように、なんとか経口での食事を続けられていたK様でしたが、心疾患の為入院されてしまい、病院では原因の分からない食事拒否が見られるとのことで全く食事を受け付けなくなってしまい、長く入院生活を送ることとなり、結局は施設を退去されることになってしまいました。

 今回は、夏の時期で、しかも認知症により食べ物の認識力が衰え、食欲が落ちた事例でしたが、今回のようなケースでは食べていただくのは非常に困難です。心疾患になったのも、食事がきちんとされていなかったことが原因かもしれず、もっと早く医学的な対応を取るべきだったかと感じています。

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