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怒りやすい認知症の人の介助は細めな声かけとボディタッチで

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 今回の記事ではいつも怒っている認知症の方に対して、細めな声かけとボディタッチを心がけることでどのような変化が現れたのかを紹介します。

●認知症と骨粗鬆症を持つKさん

 Kさんは80代の女性です。比較的進行した認知症と共に骨粗鬆症もお持ちでした。骨折の既往歴があり、その際に足の筋力低下が起きてしまい、普段の移動は車いすをお使いになっています。

 調子が悪い時にはスプーンがうまく使えず、食事をこぼしてしまわれることが多くありました。そして、失禁する事が増えたことと、車いすと便座の間の移動に苦痛を訴えられるようになったことでオムツ利用となっています。日により波はありますがご自分の名前はしっかり分かっている一方、日付やいつお食事を食べたのかなど数分前のことはすぐに忘れてしまいます。

●だんだん怒りっぽくなって

 Kさんの最近の様子を一言で言えば「怒りやすくなった」と言えます。特に車いすからの食卓の椅子、ベッド、便座等への移乗の時や、おむつ交換や着替えの時に怒りを表します。「何をするの!」「痛いじゃない!」「止めて!」「なぜそんなにいじめるの?」と言った訴えをされています。

 スタッフがKさんのお体に触れると「痛い」とおっしゃる事から、医療職に相談し痛み止めを毎食ごとに服用されています。ただ医療職も介護スタッフも痛みがどれくらいの強さか、体のどこがより痛いかと言う具体的な訴えはKさんから聞き取ることができずにいました。

 痛みには時間によって差がある様子で起床時の痛みの訴えが特に強いです。機嫌もそれに合わせてとても悪く、スタッフを叩く、蹴飛ばすことは毎回のことでした。実際に叩かれても蹴られてもスタッフは全く痛くはないのですが、Kさんが「お母さん痛いよ、助けて」と訴えているご様子はとても見ていて辛いものでした。

 痛みが絶えずあるため、それが怒りという表現になっているのではないかと考えていたので、後日、医師に聞いてみました。

●医療職と再度協議

 医師にKさんの痛みについて確認を行いました。医師からは「骨粗しょう症では腰などに何かしらの痛みが出ることが多い」と聞きました。痛いと感じる経験を多くしてきていることから、介助に対しても拒否的な感情を招いてしまうのではないかと推測されました。結果、医師としては現行の痛み止め服用の処置のままで変更なしとの判断となりました。

●介助時は声かけを細めに行う

 スタッフ間でKさんのケアを行う時は声かけをより細めに行い、合わせてボディタッチも行う事となりました。例えば靴下を履く時、履く方のつま先に触り「こちらの足の靴下をはきますよ」と声と手の動きを同時に行います。実際に介助で体に触れる、動かす前になるべく多くの情報をお伝えするようにしました。さらに介助はなるべくゆっくり行うことも心がけました。ゆっくり行うことでKさんに今、ご自分がどんな状態でいるのか、受け止めるゆとりを持っていただけたらと考えました。

 その結果、怒ることは変わらずありますが、怒らず介助を受け入れてくれる日が増えて来ました。時には「こんなに良くしてもらってありがたい」「そんなことまでしてくれるの?」と笑顔で話しかけて下さる場面も見られる様になったことはスタッフの励みとなりました。

●相手の方のペースに合わせる

 認知症の方は自分が今どんな状況にいるのか、これから自分に何がされるのかを理解いただくのに時間が掛かる場合が多いです。少なからず、そうした理解がされず混乱したままで介護を受けている方もいます。そうした状態のまま介助を受け、痛い、怖いと感じてしまう体験ばかりではご自分の身を守るために怒ることも当然の事なのかも知れません。

 先ほど紹介したご利用者様に安心感を持っていただけるような「細めな声掛けとボディタッチ」という介助を行うことは一見、時間も手間もかかるように見えます。ですが安心感を感じていただける体験をされれば今度はその安心感の感覚が残ります。その感覚は介助される側、する側お互いに気持ち良い時間を持つことに繋がります。ご利用者様が拒否なく介助を受けてくださるならば、トータルの介助時間は短くて済むことになります。安心感を持っていただくための介助は、実は一番合理的で効率的な介助法なのかも知れません。

[参考記事]
「介護拒否のある認知症の方への対応例」

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