Read Article

広告

夕方に物盗られ妄想を繰り返す認知症の人への対応事例

広告

 

 認知症高齢者の中には、例えば数十年も前に使っていて現在ない物に対して「盗まれた!」と身近な人のせいにして罵声を浴びせる事があります。御家族や介護者にしてみれば、「一生懸命に介護しているのに、なんでそんな事言われないといけないの?」と介護が嫌になることもあります。この言動は認知症のせいだと頭では分かっていてもです。

 認知症の人と介護者がどのようにすれば、お互い楽しく生活できるのか。Aさんの物盗られ妄想を通して考えてみます。

Aさんの人物像と日常生活

 Aさんは92歳になる女性で、早くに旦那さんを亡くし、長い間一人暮らしをしていました。5年前、火の消し忘れで火事になりそうになったり、夜中に「亡くなった娘が来ているの!」と叫ぶ事が増えたことで病院に連れて行ったところ、アルツハイマー型認知症と診断されました。

 Aさんは、日本生まれですが、生まれてすぐ父親の仕事の関係で樺太に住む事になりました。ですが、大東亜戦争をきっかけに、住む事ができなくなり、日本へ住む事になったそうです。その時に、当時生まれたばかりの子供を土葬する経験され、ある宗教を信仰するようになったそうです。

 そんな辛い経験をしたAさんは認知症と診断され、息子さん夫婦と同居する事になりました。ただ、毎日お嫁さんに対して「ご飯がまずい」「服盗られた」「丹前(昔の日本人がよく着ていた服)盗られた」等々の認知症による周辺症状が現れたので、デイサービスを利用し様子を見ました。しかし、改善はしなかったので、やむを得ずグループホームへ入居される事になりました。

画像[丹前]

 グループホームに入った頃は、要介護1で、歩行や食べる等は問題なく生活されており、食器拭きや食事の盛り付け等お手伝いをして下さいました。昼間は笑顔がみられ、気を遣ってか「楽しいよ」と仰って下さいます。

 問題と言えばトイレの後に紙をたくさん使い、トイレ内を汚すくらいで、職員が掃除すれば良いくらいの事でした。それ以外では、Aさんは日記を書いてましたが、そこには「息子に捨てられた。早く死にたい」とマイナスの事ばかり書かれていました。

 このようなことがありましたが、昼間は比較的穏やかに過ごされていました。

夕方の物盗られ妄想

 そのAさんが夕方17時過ぎたあたりから豹変します。そのいきさつは次の通りです。

 入居時、Aさんの今後の事を考え、今のうちにベッドの生活に慣れて頂こうと提案しました。ですが、Aさんの希望があり、「どうしても床の布団生活がしたい」という事で、グループホームでも布団の生活を継続しました。その布団を17時過ぎご自身で敷き始めます。すると同時に「ない!丹前ない!持ってかれた!」と叫び出します。これは認知症による物盗られ妄想です。

 僕や男性職員には、「丹前ないんだわ」とやさしい口調で仰いますが、女性職員に対しては「丹前持ってっただろ!返せ!」と大声で仰ったり、同居していたお嫁さんが丹前持ってったと怒り続けます。特定の女性職員に対しては「お前は物盗りそうな顔している!お前が持ってっただろ!」と言う事が続き、夜中も1時間に1回くらいトイレに起きて「丹前持ってかれた、寝れない」と訴えが続きました。

物盗られ妄想に対する対応方法

 まず、対応の第一歩として御家族に丹前について確認しました。すると、「一人暮らししている時から丹前自体持っていなかった」との事でした。

 最初から持っていないのであれば話を合わせるしかありません。ですので、職員が行ったことは本人が説明する丹前に似た丹前を女性職員が用意し、様子をみました。でも、「これは、違う、もっと高級のいいやつだ」という訴えがあり、状況は変わりませんでした。それで、僕がインターネットで調べ丹前を用意してましたが、「これも違う、もっと使い古したやつだ」という事で上手くいきませんでした。

 その結果、Aさんに罵倒された女性職員が辞めたいと言うようになったことで、開き直って「僕が捨てました」と伝え、注意を僕に向けようとしましたが、「いや兄さんじゃない、あの女だ」と言って、効果ありませんでした。

 次に僕は、夕方から徹底的にAさんと関わる事にしました。会話から「昔一人暮らししていた所に行きたい」とおっしゃれば一緒に車で出掛け、「樺太に帰りたい、また行きたい」との話しになれば携帯の動画で一緒に樺太の動画をみて、いろいろ話しを聞きました。

 また、僕がご飯当番の時は、盛り付けだけでなく、あらゆる食事を一緒に作って頂くための時間を作り、その後布団を一緒に敷き、「ごめんなさい、僕が丹前洗ってボロボロにしてしまって捨ててしまいました。代わりにこの丹前で我慢して頂けますか?」と伝えました。

Aさんに変化が

 するとAさんは「いいよ、丹前の一つや二つ」と夕方も笑顔になる時間も増え、息子さん夫婦が来て下さった時も笑顔で接してくれました。お嫁さんからは「こんなに笑顔で話してくれるのはじめてです」との言葉もいただきました。

 ただ、「盗みそうな顔」と言われた女性職員は、本人と接するのが耐えられないとの事でやむを得ず、フロアを異動する事になりました。この女性職員に限らず、全般的に女性そのものに対して嫌な感情があるのでしょうが、はっきりした原因は分かりません。

感想

 このAさんのように物盗られ妄想がある認知症の人は僕の所属するグループホームへよく入居されますが、これらの経験を通しての感想は「関係性が出来れば楽しく生活できる」と感じてます。「~さんだからもっと親密に関わる」というのはチームケアとしては良くないという意見もありますが、例え同じような介護をしても、顔や性別、価値観等々違うので対応も変わるのも当然です。

 実際、認知症のAさんは職員との関係性が深まったことで物盗られ妄想はなくなりました。やはり、認知症であろうとなかろうと、人との関わりは大事なんだと改めて勉強をさせていただきました。

[参考記事]
「認知症による物盗られ妄想への対応はどうすればいいのか」

URL :
TRACKBACK URL :

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top