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紙の収集癖がある認知症の女性への対応。お尻を拭いた紙も収集

 

特別養護老人ホームに入所して5年にになるYさん。年齢は85歳、女性、要介護3、腰が90度に湾曲しているが独歩が可能な方です。

1日の日課や場所の理解、意思の伝達等はある程度できます。難聴により、耳元ではっきりと話せば何とか聴こえますが、聞いたことと違う返答が返ってくることが多いです。

日中は時々居室に行きますが、大抵はリビングの椅子に座って過ごされています。

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紙に対する強い執着と不潔行為

Yさんは、入所時より収集癖が見られました。集めるものはたいてい『紙』です。ティッシュペーパーやトイレットペーパー、洗面台にある手拭きペーパー等です。

職員がこれらを補充に行くときも、しっかり動きを見ています。腰が湾曲しているため、テーブルや他入居者の車イスの影に隠れ、職員も気がつかないことがあります。

紙を取った後は、上着やズボンのポケットに丸めて入れます。手の指がこわばり、上手くポケットにしまえないと舐めて紙を柔らかくしたり、たくさんの紙を収集する時は口にくわえてまで持って行こうとします。

Yさんの紙を舐めたり、口に入れる行為は衛生面で問題があります。Yさんはきれいな紙だけでなく、誰かが使用した紙やゴミ箱の中の紙や床に落ちた紙くずも拾い集めるからです。

またパットが尿失禁により濡れると、気持ち悪さからパットを引き抜く行為がありましたが、その引き抜いたパットも居室にそのままになっていると、紙だと思ってちぎったり丸めたりしてポケットに入れてしまいます。

さらには、職員が見ていないうちにトイレに行って排尿や排便をし、自分が集めた紙でお尻を拭き取り、その使用した紙を再度ポケットに入れてしまいます。このように紙の収集が不潔行為にまでつながってしまっていました。

そのため職員は、Yさんに紙を渡さないようにしたり、Yさんが紙を取りに行く姿を見つけると『紙はダメですよ』と行動を制止していました。

職員が対応を誤り、不穏に

ある時、職員がYさんの入浴中に居室にある汚染された紙をまとめて捨ててしまいました。

Yさんは、入浴前に居室に戻り、ポケットに入れた紙を布団の下に隠します。入浴を終えたYさんは居室の紙が無くなったことに気がつきました。それから大声で『紙はどこやった!』『あいつが盗んだ』と叫び不穏になってしまいました。

その日からさらにYさんの収集行動は頻度が増しました。ポケットにたくさんの紙が入っていても、『紙ちょうだいよ、みんな盗まれちゃったんだよ』と訴えるようになりました。

これは明らかに職員の対応がよくありませんでした。『紙が汚いから片付けた』という理由は、職員の考え方であって、Yさんの気持ちや考えに寄り添った対応ではありませんでした。

収集癖と不潔行為に対する対策

実際に紙は汚染されているものもあり、どうにかして捨てなければなりません。そのため私たちは、汚染した紙を取り除いてもYさんが落ち着いて安心した生活ができるためにはどうするべきか考えました。

そこで2つの対策をたてました。

1つは、『紙を取らないでください』や『だめです』などの声かけは極力行わないように職員に周知しました。あまりにたくさん紙を取ったり、衛生上良くない状況の際には『これは汚れているので新しい紙を持ってきますね』や『紙が無くなってしまったので、買いに行きます。戻ったら、渡します』など、Yさんが不安にならないような声かけを心がけました。

2つめの対策は、Yさんの居室に蓋つきのクリアケースを設置しました。今後は布団の下やポケットではなく、そこに紙を入れてもらうようにしました。クリアケースは外から中も見えるので、Yさん自身、一目で紙があるか確認できました。汚染した紙があれば、本人が入浴中に取り除き、少し紙を足します。また、Yさんが紙を盗まれた、一枚ももらっていないと訴えるときは居室のクリアケースを見てもらうと納得してくれました。

この対策を実施してからも、Yさんの収集は続いていますが、今回の対策は失敗ではないと思います。紙を収集することはYさんの安心できる生活の一部です。それを全て取り上げてしまうのは残酷ですので、汚れた紙による衛生面だけを気を付けて対応を行いました。

[参考記事]
「収集癖、物盗られ妄想のある認知症利用者に対する対応」

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