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認知症の母は衣類の意味が分からない失認の症状があります

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在宅で生活している80代女性の認知症の方のケースです。
この方は息子である長男と二人で賃貸住宅で生活されています。
要介護度2で認知症レベルはトイレに行ったり、お風呂に入るなどの「日常生活動作」は維持できていますが、買い物、料理、洗濯などの「手段的日常生活動作」については長男の世話が必要なレベルです。
そのため介護者である長男が洗濯や掃除などをおこない、洗濯物の畳みは二人一緒に行っています。
これは女性の認知症レベルを低下させないという認知症進行予防のためです。

ちょっとした異変に気付く

ある時、介護者である息子さんがスーパーへ買い物(大体15分くらい)へ行った時のこと。
買い出しを終えて帰宅し、息子が部屋へ入るとあることに気づきました。

「オレのズボンがない」
そのことに気づいた息子は、自分の服を確認するとジャンパーやトレーナーにパンツなどがなくなっていることに気づきました。
呆気にとられた長男は母親に尋ねます。
「オレの服どこか片づけた?」
女性は「ふ~ん 知らんよ」と答えました。
介護者の息子さんはあらゆるところを探し回りましたが見つかりません。
たまたまベランダから下をのぞき込むと、自分(息子)の服と思われるものが見えました。
「あ~ ここから放り出したな」
そう思い服を確認しに行くと、やはり息子さんの衣類でした。

なぜ投げ捨てたのか

この認知症の女性は、洋服などは畳むことが出来ます。
しかし、その後それをどうすればいいのか、どこに保管しておけばいいのかが分かりません。
認知症の中核症状の中には「実行機能障害」という症状がありますが、これは何かを計画し、それを実行する能力が障害を受けているものです。
洗濯機に衣類を入れる→干す→乾いたら取りこむ→洗濯ものを畳む→種類別に分ける→タンスに入れるという一連の動作を行う時に「実行機能障害」があるとなかなか出来ません。
しかも、他の中核症状である記憶力の障害も伴っていることが多いですので、洗濯物を保管する場所も忘れている可能性もあります。
また自分のものではない衣類などは、たとえ家族のものであっても「異質なもの」と理解していたので「失認」もあった可能性が高いです。
失認は電話の音が何を意味するのかが分からない、自分の子供を配偶者と思ったりなど対象の認知に障害があります。

[参考記事]
「認知症の中核症状って一体どんな症状なの?」

その後の対策

その後、介護者である息子さんは自分の衣類や大切な書類などは女性の目につきにくいように保管するようになりました。
例えば大切な書類はパソコン上にファイル化して保管する一方で、原本の書類は押入れの奥に隠す、そして衣類も押し入れの目立たない奥に隠すといった対応でなんとか物を捨てられるというような行動はある程度減ってきているということです。
また、息子さんは女性の衣類を確認したところ以前片づけた時よりも大幅に数が減っていることに気づいたそうです。
自分の衣類を自分で捨てていたとしか考えられないそうです。
そのため、お母さんには必要最小限の衣類だけを自分で保管してもらい、その他は男性と同じようにお母さんから目の届かない、あるいは触らないであろうと思われるところで保管することとなりました。

しかし、何でもかんでも管理する、と「何にもしない、何もできない」につながってしまいます。
女性の周りに何にもない、自分にとって大切なものがない、といったような味気ない生活は余計に認知症を進行させてしまい、生きていくことに楽しさがなくなってしまうこととなるでしょう。
ですので、表には最小限の必要なものは残して、「多くはないけど、少なくもない」状態にしているそうです。
ただ、在宅介護では一緒に生活する介護者の視点も意識しなければなりません。
一緒に暮らしている介護者が心身ともにダウンしてしまえば「共倒れ」で元も子もありません。

認知症介護のコツ

在宅での介護というのは思いがけないことがいつ起こるかが分かりません。
例えば先ほどの息子さんの例でいえばお母さんに服を捨てられたことです。
この時、息子さんが「俺の服を勝手に捨てるんじゃねーよ。バカ野郎」って言ったらどうなるでしょうか。
長い目で見れば認知症の症状は悪化する方向に進む可能性が高いです。
ですので、怒りたい気持ちは分かりますが、そこはぐっと我慢してください。
認知症の症状は海馬が小さくなるなど脳が器質的に変化しているため起こるので仕方ないという諦めも大切かと思います。

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