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認知症による強い帰宅願望への介護職員の対応

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 特別養護老人ホームに入所されていた、当時70歳後半女性の強い帰宅願望についてお話させて頂きます。

居場所の確認

 彼女は、入所された当時は初期の認知症でしたが、日を追うごとに認知症は進行し、昼夜問わずベッドから抜け出すようになりました。自力で歩ける方でしたので、スタッフルームの隣の部屋(2階の個室)で見守りをすることを決められていました。また、起きて歩き出したのを把握する為、履いていた靴に鈴をつけるようにしました。

強い帰宅願望の訴えの始まり

 また、夕方になると落ち着きが無くなり、荷物をまとめてエレベーターの前を行き来するようにもなりました。ご本人の言うところでは、「息子が迎えに来ているから家へ帰る」という訴えでした。もちろん、そんなことはなく、ご本人の妄想によるものです。

帰宅願望への介護職員の対応

 施設であることから、どのドアも10キーにより決まった番号を押さなければ、扉は開かないようになっています。当然の事ながら「帰りたい」との訴えは介護職員に言うしか方法がありません。最初は、「疲れるから、息子さんが来るまでこちらでお待ち下さい」とお部屋に案内をしてやり過ごすことで、夕ご飯の時には、その訴えは収まっていたのです。

 しかし、通常の方でもそうですが、人には限界というものがあります。ついに我慢しきれなくなり、仕方なくフリーの介護職員が付き添う形で、1階のロビーまで下りることにしました。1階の事務所にはこの旨は連絡してありましたが、夕方ごろというのは面会の方もいるので、自動でドアが開かないようになっていても、他のご家族の出入りにまぎれて施設から出てしまう可能性も考えられます。そういう意味で介護職員の付き添いは欠かせないものとなっていました。

 1階まで降りると今度は、玄関のドア周辺をそわそわと歩きます。こういう時には「疲れてしまうので、一旦椅子に座りましょうか?」とお声がけをさせていただき、気持ちが落ち着くまで待ちます。

 この帰宅願望は他の入居者の方にも見られる行動ですが、ほとんどの場合は介護職員の日勤と夜勤の申し送りの時間帯(入れ替わりのソワソワする時間帯)ですので、フリーの介護職員も居ない施設では軽くお声掛けするか、放置しておくかのどちらかだと思います。

ストレスの軽減と利用者様の意思の尊重

 私が勤務していた施設では、余裕のある日だけは、特別に付き添って1階まで降りることにしていました。待っていても誰も迎えに来ないのは明白なのですが、やはりご本人の居室やユニット、廊下で歩き回っているよりは、一回、下に降りて待ってもらう方が気が紛れるのではないかと考えました。

対応の仕方で精神的安定を図る

 結局は夕食の時間になって「ご飯の用意がしてありますので、ご飯を食べてから帰りましょうか」とご本人を納得させて本来のフロアに戻って頂くことが一番良い方法でした。

 夕方からバタバタと歩き始め、結局は疲れて夜もグッスリと寝て頂けることもありますし、ご本人の気持ちを尊重することで、余計なストレスを抱え込まずに施設生活を過ごしてもらえます。

最後に

 その後も帰宅願望は続きましたが、最後の方には、自力で歩行できなくなり、訴えはあるものの身動きのとれない身体になってしまったので、介護職員が付き添って1階まで降りることもなく、お声掛けをしながら過ごしました。
 その方が亡くなったのを知ったのは、私が腰痛で職務の遂行が難しくなり、仕事を辞めた後のことでした。

[参考記事]
「認知症による帰宅願望の原因が便秘だった事例」

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