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認知症の人に暴力を振われた時の介護職員の対応

 

 介護施設の現場において、よく介護職員による利用者への暴力がニュースになりますが、実は利用者側から介護職員への暴力や暴言も意外に多いのです。介護職員は、着替えや入浴、体の清拭など、利用者の体に直接触れることが多いので、その際に暴力をふるわれて、ケガを負ってしまうこともあります。

 また、骨が脆くなった高齢者は、ちょっとした衝撃ですぐに骨折をしたりやケガをしてしまいます。殴りかかろうとしてくる利用者の手を抑えただけで、職員が利用者にケガを負わせてしまうこともあり、それはそれで大変なことになります。職員はただ暴力を避けようとしただけなのに、そのことで相手がケガをしてしまい、自分が加害者になってしまったら、大変なショックですよね。

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☆暴力を振るう認知症の人の介護

 80歳や90歳を超えるような高齢者が、そんなに人に暴力を振るうことなんてあるのだろうか?と世間一般の人は思うかもしれません。しかし、理性の抑えが効かなくなった認知症の人は、手加減をしません。本気で全力で相手に暴力をふるってくるのです。これが介護職員にとってどれほど恐ろしいことか、お分かりいただけるでしょうか?

 もちろん、認知症の人全員が暴力を振るうわけではありません。認知症がかなり進行していても、非常に穏やかに毎日を過ごしている人は大勢います。しかし、認知症の人は、時に自衛本能が過剰に働いて他者へ攻撃的な態度を取ることがあります。介護する側が相手にケガをさせないように上手く暴力をかわすことが出来ればいいですが、いくら注意を払っていても不意打ちの暴力すべてに対応することは不可能です。

 そもそも、なぜ暴力を振るう認知症の人がいるのでしょうか?その理由が分かれば、認知症の人が暴力を起こさないよう、介護者側が予防をすることができます。

認知症の人が他者へ暴力を振るう訳

 Hさんはまだ70代ですがかなり進行した認知症の男性です。足が悪く歩くことが出来ないので移動は車イスです。食事も一人で摂ることが出来ず、ほぼ全介助の状態です。Hさんはいつも黙って顔をしかめ、一日中ほとんど誰とも会話をしません。職員が話しかけても黙っているか、「うるさい!」と怒鳴るかのどちらかです。食事を嫌がり職員に唾を吐きかけたり、いきなり足で蹴とばして来たりするので、女性職員などは怖がって恐る恐る介護をしている状態です。

 入浴介助の時は特に激しく抵抗するので、衣服を脱がせるのも大変。男性職員が数人がかりで何とか入浴介助を行うのですが、職員の手は引っ掻き傷だらけ、足にも痣ができてしまうほとで、皆ほとほと困り果てていました。

 なぜHさんは職員にこれほど暴力を振るうのでしょうか。それは、「不安」や「恐れ」の表れであると私は考えています。認知症の人は、体が思うように動かなかったり、会話で意思の疎通をはかることが出来ず、他者と上手くコミュニケーションが取れないケースが多く、「不安な気持ち」や「恐れる気持ち」が普通の人より強くなる傾向があります。

 そんな時、自分に関わってこようとする他者=介護職員に咄嗟に暴力や暴言が出てしまうのです。自己防衛反応ですので、自然の振る舞いだと言われればそうかもしれませんが、ここは介護施設です。対策をしないわけにはいきません。

暴力を振るう認知症の人への関わり方

 利用者が暴力的な行為をした時、介護側は感情的にならず冷静になることが大切です。Hさんの場合も、自身に危険が無い状況であると分かれば、それ以上相手を刺激しないために職員はそっとその場を離れ、落ち着くのを待つようにしてみました。時間が経つと、まるで別人のように大人しくなることもありました。

 しかし、それでもHさんの興奮が収まらず、危険な状態であれば、すぐに他の職員に助けを求め、数人で対応するようにしています。全力で暴力を振るってくる相手にたった一人で対応するのは、お互いにとって大変危険です。興奮状態にあると自身で転んで、ケガをする場合もあり、ただ放っておけばいいという訳にはいかないのが難しいです。

 Hさんともっと気持ちを交流させることができればいいのですが、現状はまだ難しい状況です。私たちに出来ることは、「ここは安心して暮らせる場所ということ」、また「介護職員は敵ではなくHさんの味方であること」を、普段の接し方の中で本人に少しずつ感じてもらいながら、時間をかけて丁寧に関係を育むことです。

まとめ

 利用者の安全だけでなく、介護する側も安心して仕事が出来るよう、暴力を振るう認知症の人への対応を職員全員にしっかり指導することが必要です。また、暴力の理由を探りながら、利用者が安心できるような環境を作っていくことも大切です。

[参考記事]
「認知症の人の殴りかかってくる暴力行為の理由が分かった事例」

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