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認知症の入居者の帰宅願望が意外なきっかけで軽減された実例

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今回は特別養護老人ホームに入居されているMさんの帰宅願望が軽減された事例についてお話します。

入居をする際のMさんは要介護度3で、認知症の度合いとしては特に短期記憶がすごく弱い状態でした。
1分前に言ったこと、行ったことを既に忘れており、同じことを何度も繰り返そうとします(少し前に飲んだ薬のことを忘れており、再度要求するなど)。

身体機能の面では特に麻痺などはなく、歩行は自力で可能ですが、時折ふらつきがあるため階段の上り下りは難しく、一人で外を歩くのは危険な状態でした。
ですが、日中・夜間共に外への徘徊が目立つようになり、Mさんの安全のためご家族とケアマネージャーの判断のもと施設への入居を決められました。

施設での帰宅願望

ですがMさんはまったく納得をされておらず、毎日朝から晩まで
「今日は何時に帰れますか?」
「家族はなぜ迎えに来ないんですか?」
との訴えが続きます。

時にはなかなか帰れないことに腹をたてられ、ご飯も食べたくないと提供した食事やお茶をひっくり返されることもありました。
職員間では施設の環境に慣れていないことも原因の一つだろうという意見があり、少しでもコミュニケーションを取るために、気分転換になるようなレクリエーションを勧めたり、Mさんが昔好きだったとご家族が話されていた歌や塗り絵の話しをしてみたりと色々してみました。
ですが帰宅願望は数ヶ月経っても治まることはなく、むしろ酷くなっていくばかりで隣席の方とトラブルになったり職員と顔を合わせるたびに暴言を言われるようになりました。
歩行時にふらつきが見られる際、付き添いをしようとしても「こけてしまったほうがいい。」と言われ、介助拒否をされることが増えていきました。

帰宅願望に対する対応

ある日、新しく入られたほかの入居者の方が職員に「私何か手伝うことある?」と聞いてくださったので洗濯物たたみをお願いしたところ、先ほどまで帰宅願望が見られ落ち着かない様子だったMさんがその洗濯物を抱えてフロアの自分の席に戻ったのです。
初めは家に帰れない腹いせに洗濯物をお茶で汚すのかなと思っていたら、洗濯物をたたみ始めたのです。
そこで私はさらに
「Mさん、こっちの洗濯物もお願いできますか?」
と違う洗濯物も手渡すと

「こういう作業は昔から得意です。」
と返答を返してくださいました。

その日から洗濯物たたみをMさんに毎日お願いして、たたみ終わったら
「ありがとうございます。助かりました。」
と声をかけることを繰り返していくうちに
Mさんの方から
「今日の洗濯物は?」
「今日もお仕事があるよね」
と軽く微笑むように笑顔を見せて下さる日が少しずつ増えていきました。

Mさんは今でも午後から帰宅願望を訴えられることはありますが、以前のように攻撃的になられることはほとんどなく職員の声掛けにも耳を傾けてくださるようになりました。

私の勤めている特別養護老人ホームではMさん(要介護度3)が入居してこられるまで要介護度が4や5の方ばかりで、私たち介護士は入居者に対して一方的に介護を提供するという姿勢でやっていました。
ですがMさんの場合こちらから何かをして欲しかったわけでは無いですが、必要とされ、人から「ありがとう」と言われるような環境が欲しかったのではないかということに気付かされました。
職員も介護職に付くにあたって「生きがいが認知症の進行を遅くする」ということは知識としては知っていたはずです。
ですが習慣化していなかった為ついつい忘れがちになってしまいます。
こういった職員側の考え方を少し変え、ご本人にとって「その施設にいる意味」を探してあげることの重要性を再確認した事例でした。

[参考記事]
「[認知症介護]生きがいを見つけたことで排泄ケアが上手くいった例」

「デイサービスを使うと薬の効果が高くなるのか」

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