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帰宅願望が強い認知症の方に対しての対応事例

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 Tさん(男性、78歳)はアルツハイマー型認知症の方で、発症してから3年経過していますが、日常生活動作はほぼ自立しています。今はデイサービスに週5回通所しています。家では奥様と2人暮らしで、子供は2人いますが別居しています。

 Tさんは家では急に焦燥感強まり不穏になって、家の中を歩き回ることがあるようです。奥様は時に不穏になるTさんとの生活に少し疲労を感じているようです。

 私たちは奥様の負担を少しでも軽くできることを目標に、デイサービスへの通所を援助していました。しかしTさんはふとした時、急に「帰りたい、帰らせてください」と強い口調で言います。

急につのる帰宅願望

 朝、私たちが自宅へ迎えに行くと、Tさんはリュックサックを背負って玄関で出かける準備をしています。その時は笑顔で奥様に「行ってきます」と話されます。車での移動中も「今日は天気が良くて気持ちがいいですね」とリラックスして会話を楽しんでいる様子です。

 デイサービスに到着後、1時間ほどはスタッフと笑顔で会話を楽しんでいるのですが、急に「帰りたい」と歩きだします。デイサービスと併設している施設内(高齢者住宅と棟つながりになっている)を歩きまわるのです。施設の外へ出てしまう危険性もあるので、スタッフが一緒についていくのですが、そのような時はいつも表情が硬くこわばっています。

 私たちは将棋でもしませんか、お風呂を温かく準備してますよと気を逸らすように話しかけます。しかしTさんの帰宅願望は変わらず「帰らせてください」と変わりありません。Tさんの出身地である香川県の話や若い頃の話を聞かせてくださいと回想法を試みますが、「いや、そんなことより帰りたいんです」と効果はありません。Tさんがリラックスしながらデイサービスで過ごされる方法として、私たちはどうしたらよいだろうかと頭を捻りました。

食事そのものより、調理が楽しい

 Tさんはお昼ごはんのときも「あまりお腹は空いてませんから」と、食事があまり進みません。奥様の情報からカレーやシチューが好きだと聞いていたのですが、好きなはずのメニューを提供してもそれは変わりませんでした。

 ある時、スタッフの一人がホットプレートを使って「ホットケーキでも作りませんか」とTさんを誘いました。最初あまり乗り気でなかったTさんですが、調理をしていく中で次第に笑顔が見られるようになりました。一緒に作ったホットケーキを「おいしいですね」と話され食べています。調理をして自分の作ったものを食べるという行為はTさんにとってとても楽しいことのようでした。

 その後も帰宅願望が全く消えることはありませんでしたが、その都度たこ焼きやかき氷を一緒に作って食べることで、Tさんはリラックスして過ごす時間が持てるようになりました。

 私たちは、Tさんにとって「スタッフと一緒に調理をして食べること」が、落ち着いて楽しめる行為だと分かりました。奥様に聞くと、「今まで家では全く調理をしたことはない」のだそうです。むしろ私たちがいつも誘っていた将棋が趣味だったそうです。
認知症の進行により性格が変貌することがあるように、楽しめる行為もまた変わっていくことがあります。それぞれの方にあった個別性を大切に、ケアを模索していくことの重要性を学びました。

[参考記事]
「認知症による帰宅願望が息子からの手紙の効果で無くなった事例」

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