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認知症の方の暴力が介護士との共通の趣味を通じて解決した事例

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Aさんは70代後半の女性でアルツハイマー型認知症とパーキンソン症状があり、養護老人ホームに入居されています。
養護老人ホームは経済的な困難者だけではなく、家族との関係が拗れて(こじれて)しまい、存在や居場所を知られないように入居している方も少なくありません。
ですので養護老人ホームでは入居者情報を他施設に比べて厳密に保護していることが多く、施設内での写真の展示すらしてはいけない方なども多数います。
Aさんもそのうちの一人でした。

Aさんは物取られ妄想、幻覚、錯覚、せん妄、暴言、暴力、うつといった認知症の周辺症状が顕著に現れている方で、特に夜間にそういった症状が出現することが多いです(参考記事「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」)。
また、歩行器を使うことで一人での歩行が可能ではありますが、以前転んでしまった時の不安と恐怖が大きく、自室から出ることはほとんどありません。
食事も排泄もすべて自室内で終えることを強く望んでいました。
そのAさんが唯一
自室から出てくる時は「あること」を聞くためです。
Aさんは認知症が進んでおり、自分がどういった経緯で養護老人ホームに入居したかということを覚えていません。
毎日、社会福祉士の元へ訪れて「なぜ、私はここにいる?」「私の家族はどこにいるの?」と聞いてきます。
それ故、家族と会えない寂しさや苦しさという感情だけが日々重なっていきます。
そういった感情が募るあまり、介護拒否や他者への暴言、暴力に向かっているように感じられました。
幻覚も家族に関することで、もう大人になって結婚している自分の息子が子供の姿になって現れることが多いようでした。

私の趣味を通じて心を癒してあげたい

そこで私は少しでもAさんの心を軽くしてあげたいと思い、自分の趣味を活用することにしました。
私は絵を描くことが趣味で
「絵でAさんを喜ばせることができるのではないか」
「絵を通じてAさんが新しい趣味にたどり着けるようになるのではないか」と考えました(幸いAさんは絵を描くことを昔趣味にしていました)。

行動が少なくなると認知症の症状は早く進んでいきますので、絵を描くことで頭を使ったり、身体を動かして欲しかったのです。

そこで「Aさんが普段知る機会がない対象物を描くことで何か感じることができれば」と思い動物、風景などを描いては渡しました(その後はAさんが望む物を描いてあげました)。
Aさんはもともと水彩画や手芸の趣味があったので非常に喜ばれました。
私は日勤でしかAさんと会う機会がなかったので、部屋に私の形跡を残すことは効果的だったようです。
私の名前は毎日忘れてしまいますが、一緒に笑ったり泣いたりしたことを少しだけ継続的に覚えてくれることが多くなりました。
共通の趣味を持つことで、人と心から接しているということが伝わっているようでした。
時には家族に関することで一緒に泣いたり、愚痴を言い合ったりすることで「一人じゃない」という感覚を拒否せず受け止めてくださったようです。
もちろん、私には暴言や暴力などをしてくることはありません。

Aさんが寂しいと感じる根本の理由は、多忙で激務の職員の方と満足するまで接することができないことが要因だったのではないかと感じます。
認知症の方は物事は忘れるけどその時感じた気持ち(感情)は忘れないとよく言います。
それ故、「寂しい」、「不安」、「もっと話したい」などの気持ちが日々残ってしまい、暴力や暴言につながっていたのではないかと思いました。

認知症介護において、何よりも認知症の方に「寄り添う存在」というものが必要不可欠です。
それは家族かもしれないし、私たちのような介護士かもしれません。

[参考記事]
「脳血管型認知症により暴力行為が収まらない男性の事例」

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