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水商売で生きてきたアルツハイマーの女性が彼氏に金を渡すように

 

 現在、私がケアマネジャー(介護支援専門員)として関わっている方の中に、若い頃から水商売の世界で生きてきたAさん(69才の女性)がいます。その方は数年前に若年性アルツハイマーを発症し、それによって仕事が困難となって、切り盛りしていたお店を娘に譲り引退しました。

 その後は自宅で過ごしていましたが、尿失禁や、物忘れによる不安感、物盗られ妄想、判断能力の低下、お金の使い込みなどが起きていました。娘が在宅生活が困難となったと判断し、入所先の相談に見えたことが関わりの始まりでした。

 私は当時、同一事業者が運営する住宅型有料老人ホームの営業も実質的に兼ねている状況でした。そして、Aさんは当施設の入居条件に当てはまっていたので、ご入居者いただくこととなりました。

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金銭問題がネックに

 Aさんの一番の課題は、金銭管理でした。ずっと水商売をやっていたためか、かなりの貯蓄があるのですが、認知症の症状の影響で金銭感覚が鈍り、次々と色々な買い物をしたり、面会に来た知り合いにお金を渡したりしていました。

 さらには、特定の男性の方(御用聞き?友人?世話をしている人?かこの時には分かりませんでした)がよく顔を出すようになり、一緒に外出するようになっていったのです。それ以降、娘からどんどんお金が減っていると連絡が来るようになり、私たちも困惑していました。

 本人に話を聞いてみても、
「友達だ、何でもない、何か用事があるときに車を出してもらっている。そのときにお礼を渡すぐらいのことをしているだけだ」と答えるのみでした。

 娘にお話を伺ったところ、どうやらお店をやっていた頃の常連さんで、Aさんとお付き合いをしていたこともあったそうです。そうしている内に、突然その男性の方が新車に乗ってくるようになったのです。それをみて、私たちは経済的虐待を疑いました。ただし、確実な確証もなく、通報することもできずに、地域包括支援センターに相談することにしたのです。

金銭問題に対する対策

 結果、成年後見制度を利用することとなりました。本人はすでに判断能力に乏しいと判断されてしまったため「任意後見制度」を使うことはできず、裁判所が決定した社会福祉協議会の方に「法人後見(法定後見制度)」をお願いする運びとなりました(成年後見制度は法定後見制度と任意後見制度があるのですが、任意後見制度は正常な判断力がある人でないと適用されません)。

 それ以降はお金の消耗もなくなり、経済的な心配はなくなりました。その男性もお金をもらえないと分かったのか通ってくる回数が減り、安心することができました。

 そうこうしているうちに、彼女の認知症は進み、物盗られ妄想が出るようになり、「なぜ自分のお金を自由に使えないのか」「通帳を盗られた」などと発言し混乱するようになりました。

 現在もまだその状態は続いており、その都度、成年後見制度のことを説明し、納得していただくようにしています。ところが、だんだんその理解も難しくなり、その話に納得できずに大声を上げたり、泣き出すようになってきました。

 そのため、現在は精神科に相談し、服薬調整をして穏やかに過ごすことができるようになってきているところです。近頃は歩行状態も不安定となり、杖をついて歩いています。まもなく、車いすが必要になってくるのではないかと思われる状態です。

 今までお会いしたことのない生活歴の方で、はじめは戸惑いましたが、とても貴重な経験を現在進行形でさせていただいています。

[参考記事]
「[認知症介護]物盗られ妄想、迷惑電話を解決した方法(実例)」

「[認知症介護]物盗られ妄想、徘徊、うつ症状が改善した事例」

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