認知症状を持つ人とコミュニケーションを取る場合には「状況を把握すること」と「非言語コミュニケーションを多用すること」が大切な要素ですので、一つずつ解説していきます。
第一の要素「症状を把握する」
まず「言葉をどれだけ使えるのか」「話しを理解できるのか」などを把握し、そしてこれはどのような症状なのかを理解しましょう。認知症の中核症状の1つに失語症があります(中核症状は全ての認知症の人に現れる症状です)。失語症は2種類あり、ウェルニッケ失語とブローカ失語と呼ばれています。
「ウェルニッケ失語」は脳の言語野に萎縮が進んだ場合に発現し、コミュニケーションを容易にする手段である言語を上手に使う事が出来ません。
特徴としては
①言葉は話せるが、意味が通じないことを言ったり、言い間違えが多くなる
②言葉を理解出来なくなるので、こちらが言葉で伝えようとする内容が伝わらなくなる。「メガネを持ってください」と言っても他のものを持ったりする。
「ブローカ失語」は脳の運動野に萎縮が進んだ場合に発現します。ウェルニッケ失語との違いは、言語を理解出来ることです。運動野に萎縮が進み、口腔周りの筋肉を上手く使うことが出来ずに言葉を発することが出来ないだけなので、筆談など周りが配慮する事で、言語的なコミュニケーションが可能です。ブローカ失語は例えば花屋の写真を見せて、「これは何ですか」と質問しても「はなや」を「はだな」などと発音したりします。私が今勤務している事業所に実際このケースに該当する人がおり、コミュニケーションはいつもホワイトボードを使っています。
第二の要素「非言語コミュニケーションを多用する」
認知症の人とのコミュニケーションでは、言葉だけではなく非言語コミュニケーションも大事で、非言語コミュニケーションを自在に操れるかどうかで認知症の人とのコミュニケーションの容易さは大きく変わります。
『体を向き合わせて目線の高さを合わせる。その後に触れたり、話しかける』という一見大げさに見える行動が、認知症の人に対しては『私は今あなたに関わろうとしていますよ』という意思表示として発せられます。私は介護職員として勤務する中で、これらを実施し続けていますが、認知症の人の自発性や意欲に関して良い変化が現れます。その変化に付随する形で活動性にも良い影響があるので、ADL(日常生活動作)の向上やBPSD(周辺症状)の減退・消失という結果が現れます。BPSDが消失するまでは長い道のりがありますが、結果として表れると専門職として強い達成感を得られます。
[参考記事]
「認知症の周辺症状ってどんな症状なの?」
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