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特別養護老人ホームで重度認知症の介護をしています(実例)

 

 私は特別養護老人ホームで、かなり重たい認知症の人の介護をしています。認知症で食事が全く摂れない方は、胃瘻という選択する方もいますが、私の施設ではワンフロア(25人)に5人ほどは胃瘻です(胃瘻とは、胃に穴を開けて直接栄養を入れることを言います)。

 その他にも立位が取れる方は、あまりいませんので、主に車椅子、寝たきりの方が多いです(中には少ないですが、立位が取れる人もいます)。

 また、意思疎通ができない場合も多く、正直なことを言うと、言っている意味が分からないことがあります。意思が伝わらない事に腹を立てて暴力を振われることもありますが、それでも、認知症の方と接するときは、
①何が起きても怒らないこと
②絶対に否定しないこと
が大切です。

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①私が経験した事例1(怒らないこと)

 1つ目は「①何が起きても怒らないこと」の事例を紹介します。認知症の症状として、ご飯を食べたのも忘れることが頻繁にあります。

 例えば、朝ご飯を食べて、薬を飲んだ後すぐに、「ご飯まだ?」と聞いてきます。当然、介護士からは「もう食べましたよ」と言いますが、相手は、素直に聞き入れません。すると逆上をして暴力を振るってきたり、持っている杖で殴られてりもします。

 そう言ったときも、怒らずに冷静に対応することが必要です。このような状態でも私が怒らないのは「認知症の症状は脳の変化によって起き、普通の人が暴力を振るうのとは状況が違う」ことを心の底から理解しているからです。もちろん、「仕事でお金をもらって介護をしている」というプロ意識も根底にあります。

 また、「もし私がその認知症を患っている立場だったら」と置き換えることをしています。私もいつかこの認知症の方と同じで暴力を振るうかもしれません。その時に高圧的な態度で怒られるのは嫌ですから。

 これは私の祖母の教えも影響していると思います。私の祖父はある宗教団体を率いている家庭の娘でいつも私に因果応報という教えを語っていました。因果応報は人に行ったことがいつか自分に返ってくるという考えですが、小さいころから言われ続けていたせいで、自然にこの考えが染みついています。ですので、一般的な介護士の考えではないかもしれません。

 暴力を振るわれた際には、ただやり過ごしているわけではなく、まず本人に「これはしてはいけない」ということを伝えます。先ほどの言いましたが、私が勤めている施設は重度の認知症の人が多いので、言っても理解していただくことは難しいですが、それでも暴力は止めてほしいことを伝えます。

 人に何かを伝えるのは言葉だけではなく、それ以上の心というか、魂と言うか分かりませんが、そういうものもあると思っていますので、そこに伝わるような態度で言います。

 それでも、職員に危険が及ぶような行為が止まらない場合には身体拘束をすることもあります。身体拘束は家族の了承が必要ですし、勝手に出来るわけではないのですが、私たち職員もこんなことをしたくはありません。

②私が経験した事例2(怒らないこと)

 2つ目も「①何が起きても怒らないこと」の事例を紹介します。認知症の方の食事介助は、スムーズにはいきません。食べたものを口から吐く方が多いです。また、暴れて食事のお椀を投げてしまう方もいます。こういった時も、怒らずになぜ、そうなったのかを分析をします。

 暴れてしまった理由は
「ご飯が不味かったのか」
「食事環境が悪かったのか」
などがありますが、ご本人にあった食事環境を作ることを考えます。例えば、早食にする、個別でご飯を食べてもらうなどの個別の対応をします。

③私が経験した事例3(絶対に否定しない)

 3つ目は「②絶対に否定しないこと」の事例を紹介します。認知症の方は、排泄に時間がかかります。特に、排泄を嫌がる方がいます。理由としては、「ここが排泄をする場所」という概念がないのです(認知症が重度の場合)。

 なので、排泄時はトイレがここだということ何回も教えます。すると、段々と相手も覚えていきスムーズに行うことができます。この時に決して急かせたり、早く済ませてほしいという態度は取らない事が大切です。

 そして、「絶対に否定しないこと」の中には認知症の方の残存機能を否定しないことも含まれます。認知症でオムツの方もいますが、最近の施設では排泄介助が上手くいかなくても、オムツにすぐに変えるということはありません。

 オムツ交換の方が排泄介助が楽だからという介護士側の理由でオムツにすぐに変えてしまう施設もあると聞きますが、それは間違えています。オムツにすぐに変えるとご本人のADL(日常生活動作)が落ちるので、あまりしたくない行為です。

 ですので、通常のオムツ介助は、立位が全く取れず、意思疎通も取れなくなった重度認知症の方に限られます。オムツ介助になると、1日に4回ほどの交換になります。認知症の方で、オムツ交換を嫌がる方もいますし、オムツ破りをする方もいます。すると、排泄物で洋服も体も大変な事態に陥ります。

 しかし、オムツ破りは、相手に非があるのではなく、介護士がオムツの不快感に気づかなかったという理由があります。

 このように介護の仕事は大変ですが、辛いことだけではありません。認知症の方の意識がクリアなときは、昔の話をしてくれます。足尾銅山で働いていたことや第二次世界大戦の時代に旧ソ連に抑留されていたなど、教科書でしか聞いたことのない話を聞くことができます。こういう時にはその方の昔の姿を想像して嬉しくなったりします。

[参考記事]
「[認知症介護]快適な居住環境作りをして、症状が改善した例」

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