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食べ物や食べ方が分からなくなった認知症女性に対する対応

 アルツハイマー型認知症の70代のK様(女性)は、ご自宅でご主人と2人暮らしをしています。子供は遠距離に家庭を持ち生活をしているため、年に数回しかK様にお会いする事はありません。

 当初、ケアマネジャーより「軽度の認知症がありますが、デイサービスで受け入れられますか」との話がありました。一度体験をしてもらい、「物忘れ」や「同じ事を繰り返し話すこと」はあるものの、職員の指示が通ることや定員に空きもあるということで週二回のご利用をスタートしました。

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【施設利用開始 水分を飲まない】

 利用を開始し特別問題もなく楽しまれていましたが、水をあまり摂取しないことが分かりました。デイサービスに到着時に皆さんにお茶をお出ししますが、この時点では、あまり飲まれない方も多いので、さほど気にはしていませんでした。

 入浴後は当然、水分補給をすると思っていましたが、コップのふちに口を付けるだけで、ほぼ飲まれていませんでした。入浴後が汗もかき、身体が水分を欲しがるため、水分を摂取しないと脱水症状になる危険性があります。

【水分補給の対策】

 看護師と相談し、まずは言葉だけで水分補給してもらうように話しかけましたが、まったく無理でした。そこで、もしかしたら普段、自宅で飲まれている飲料と同じものなら飲むのではないかとケアマネージャーとご主人様に相談しました。自宅では普通にお茶を飲んでいるものの、頻繁には飲まないとの事でした。自宅でもあまり飲まないとの事で、施設であればさらに慣れるまでは緊張しており、それが理由なのかなど、いろいろ考えました。

 利用開始からしばらくしても大きく改善されることはありませんでした。口に水分を含ませてもらう程度でした。ケアマネージャーに相談し、かかりつけ医に聞いてもらったところ、元々、水分をあまり取らない患者であったとの報告がありました。ただし、できるだけ水分を飲ませるように努力してくださいと伝えられました。

【水分補給だけでなく食べ物を食べなくなる】

 施設利用から6カ月経過すると、昼食を徐々に食べなくなり、まったく手を付けなくなってしまいました。「嫌いな食べ物があるのだろうか?」「今日は気分、体調が悪いのだろうか?」「口、喉、食道、内臓関係等に異常がるのではないか?」と考えました。ケアマネージャーやご主人に話したところ、自宅でも食べなくなってしまい困っているとの話しでした。

 ご主人がかかりつけ医に相談したところ、認知症が進行しており「食べ物が分からなくなっている、もしくは食べる行為を忘れている可能性がある」とのことです。確かにK様はご自分で食べる能力はあるにも関わらず、出された食べ物をじっと見たり、投げつけたりしていました。「食べない」ため徐々に痩せて行きました。「食べない」行為は、生命の危機に値する事です。

【食べさせる工夫】

 食べ物が分からなくなっている為、職員が昼食時に一緒に食べるようにしました。同じ動作をしてもらえれば、きっと思い出すのではないかと試みましたが、拒絶されました。

 無理に口に入れる行為は虐待に近い行為になりできませんので、しばらく様子を見るようにしました。自宅ではご主人がK様の口に食事を運ぶことで、少しは口にするようなりました。しかし、施設では拒絶反応を示すため、テーブルに食事を運び、ゆっくり様子を見ることにしました。もちろん床に落としたりすることがありましたが、見守りを徹底し続けました。

 ご主人によるとK様は甘いものが大好きとのことで、「味付けの工夫」を行い、K様だけに甘い味付けにした食事を提供しました。そして、職員が一緒に食べながら「おいしいよ」「甘いよ」などと話しました。また、周囲にいる利用者様も協力してくれて「おいしいから食べてごらん」「とっても甘い」など楽しそうに食べ物を口に入れる動作を見せてくれました。

 すると、K様はスプーンを持ち、「おいしいの?」とつぶやき自分から少量ですが口に運ぶようになりました。しばらくは少量のみですが、徐々に食べられるようになってきています。しかし、水分補給は改善されないまま継続しています。

【食事で水分摂取を補う】

 食事は以上の対策や周囲の協力によって改善される方向に動いています。毎日、楽しく食べられるよう工夫することが重要です。一人ではなく大勢で楽しんで食べる環境作りが必要と我々は考えさせられました。

 水分補給が不足しているため、ごはんをお粥にしてスプーンで食べていただくことにしましたが、「おいしい」と言って食べています。我々があきらめたらそこで終わってしまいます。何か手がかりがあると思い日々、見守りをしながら挑戦をしています。

[参考記事]
「過食、盗み食いを行なう認知症高齢者に対する対応(実例)」

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