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認知症入所者の仮性作業(意味のない行為)に対する対応

 

 特別養護老人ホームで勤務していた時の話です。入所者のOさん(女性・87歳)は、認知症の症状が進行し、独居世帯から入所することが決まりました。

 Oさんは縫製工場に務めておられた方で、子どもが独立後伴侶に先立たれ、そのあとは自宅で一人で生活していました。

 長男世帯は別の県で生活しており、嫁いだ次女の方が定期的にOさんの身の回りの世話をしていました。その次女も高齢となり、Oさんの認知症状が進んだことから相談を受け、特別養護老人ホームへの入所が許可されました。

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深夜に布団のリネンを剥がす(はがす)行為(Oさんの仮性作業)

 Oさんは比較的身体症状の軽い方だったので、同程度の認知症状のある入所者の方と一緒の大部屋で生活されていました。物忘れはあるが大声を出さない・自立で歩行できるタイプの入所者です。

● 現在の介護施設は、個室対応が主の介護体制となっていますが、私が勤務していた頃は、大病院のような大部屋での介護が主体でした。

● 大部屋の構成は、独自歩行できる方・歩行に介護の必要な方・寝たきりの方で分かれていました。

 職員の間で、夜勤帯で話題になったのは、Oさんが自分のベッドや他の入所者のベッドのリネンをはがす行為(仮性作業)でした。「仮性作業」とは本人は意味があることをやっているつもりでも、周りから見ると訳が分からない行為のことを言います。

 Oさんは特にベッドカバーや布団のカバーを取り払ってしまうことが多く、Oさんのリネンを剥がす行為が始まると、他の入所者の方からコールボタンが鳴る程でした。

 Oさんに「何をしているんですか?」とお聞きしたところ、「息子が帰ってこないから敷布を剥がして待っていた」という、明瞭でない返答が返ってきました。

 「Oさん、お布団を剥がしたら、息子さんが眠れないんじゃないですか?」と私が言うと、「あー、それもそうだねえ…」とOさんは考え込んでいるようでした。

 黙り込んだ後で、Oさんはまたすぐに、掛布団のカバーの紐を結んだり、ほどいたりし始めます。Oさんは縫製工場に勤めていましたので、布団などを触っていると安心するのかもしれません。

カンファレンス

 このOさんの一見意味がわからない行動に関して、職員間でのカンファレンスが設けられました。カンファレンスでは職員から、次の意見が出ました。

● リネンを剥がすのは、息子さんに会えなくて寂しいからではないか?

● 元々縫製の仕事をしていたので、習慣でリネン(布)に触ってしまうのではないか?

● Oさんは手先が器用なので、何か別の作業をしてもらってはどうか?

 この時にOさんに個室に移ってもらってはどうかという意見も出ましたが、対応できてもベッド数の関係で一時的にしか部屋の移動ができないため、却ってOさんが環境の変化に不安を感じるのではないかという話になり、居室はそのまま大部屋ということになりました。

 1人部屋でご自身のお布団のリネンを剥がすだけであれば他の入所者に迷惑をかけることではないので、良かったのですが。

 そこで、Oさんの昼夜逆転の症状も気になっていたため、日中、リハビリの後に食堂で過ごしてもらいました。
その際に、職員と一緒に入所者の洗濯物たたみを手伝ってもらいました。

 また、本人から希望があるときは裁縫箱を貸し出し、職員の見守りの元、食堂で裁縫の作業を行ってもらいました。Oさんは、お手玉を作るのが上手でした。作品を褒めると「手が震えるから、今はへたくそなんだよ」と照れていました。

 そうこうするうちに、Oさんの昼夜逆転の症状が治まっていき、居室のリネン類を剥がすという行為も徐々に治まっていきました。それでも月に一回程度は、リネンを剥がす行為があったように覚えています。

[参考記事]
「認知症による見当識障害や徘徊がユマニチュードにより改善」

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