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認知症の人がデイサービスに行くことを拒否する時の対応

 

 認知症のあるSさん(89才女性)についてお話します。Sさんは、ご主人が亡くなったあと、一人暮らしをされていましたが、認知症が進行してきた為、近くに住む娘さんが泊まりで様子を見ていました。しかし昼間、娘さんが仕事に行っている間は、Sさんが一人になってしまう、ということで、デイサービスを利用されることになりました。

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毎回、デイサービスに行くことを拒否

 Sさんには認知症による記憶障害がありました。デイサービス初利用の日。Sさんは、「馴染めるかしら…」と不安な気持ちが強く、「行きたくない。」と、娘さんに泣きついたそうです。目を真っ赤にしてデイサービスへ来られましたが、デイサービスでは穏やかにいい笑顔もたくさん見られました。

 しかし次の利用日も、目を真っ赤にして来所されました。娘さんから話を聞くと、前回と同様、「馴染めるかしら…」と泣かれていたそうです。何度来所しても同じ。毎朝「行きたくない」と泣いてしまうそうです。Sさんは、デイサービスの存在自体を毎朝忘れてしまっているようでした。次第に娘さんも、Sさんに泣きつかれることにストレスを感じるようになり、毎朝Sさんと怒鳴り合いのケンカになってしまったそうです。

 これでは、Sさんにとっても娘さんにとっても、心に大きな負担をかけてしまいます。Sさんが安心してデイサービスに通え、娘さんが安心してSさんをデイサービスに送り出すためにはどうしたら良いか、対応策を考えました。

意欲を引き出すための対応

 朝お迎えに行くときに、職員は毎回「デイサービスの介護職員の◯◯です。よろしくお願いします。今日は私と一緒に楽しいところに行きましょう。」などと自己紹介をするようにしました。しかしSさんは、「私行きたくないの…」と言います。

 そこで職員が、「今日、どうしてもSさんに手伝って頂きたいことがあるんです!」と言うと、Sさんは、「そうなの?私に手伝えるかしら?」と、少し照れながら送迎バスに乗って下さいました。

 その後も、毎回繰り返し同じようにお誘いしました。すると「デイサービス=私が役に立てる場所」と思うようになったようです。数ヶ月後には、デイサービスの送迎バスが来ると娘さんに「仕事行ってくるわね」とニコニコしながら話すようになり、拒否がなくなりました。認知症により記憶力が弱くなっているSさんですが、繰り返しているうちに良いイメージとして認識してくれているようでした。

 Sさんは若い頃、仕事に熱心な方だったそうです。デイサービスでも、タオルを畳んで下さったり、機能訓練に使う道具を他の利用者さんに配って下さったりと、とにかく働き者。人に頼られることが好き。認知症になっても、そこは変わりませんでした。そんなSさんの過去が、対応のヒントになりました。

 機能訓練のときも、「私はやらなくても元気だから大丈夫よ」と言われていましたが、「他の利用者さんのお手本になってください。」「他の利用者さんに教えてあげてください。」などと言うと、拒否なく喜んで機能訓練をやって下さいました。

 入浴を拒否されたときも、「職員がどうしてもSさんに相談に乗ってもらいたい。お風呂にでも入ってゆっくり話を聞いてくれないかしら?」と言うと、「仕方ないわねぇ。」などと言いながら、お風呂に入って下さいました。

 以上の対応を行った結果、娘さんは、「朝、行くのを拒否することがなくなり、ケンカもなくなりました。」と喜ばれていました。仕事熱心な方で、頼られることが好きなSさんの場合、「頼る」ということが、意欲を引き出す方法として効果的でした。その後もSさんは、意欲的にそして楽しくデイサービスに通って下さっています。

[参考記事]
「デイサービスのキャンセルによって事業者が被る損失」

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