私自身このタイトルの「認知症の人が何度も同じことを言う」の経験がありますが、周囲の人が想像できない程のストレスに見舞われます。私の介護職員の経験から、認知症の方から同じことを何回も言われた時に、どうすれば良いのかを説明します。
1つの会話として話を膨らませる
まず、無意識か故意かに関わらず批判的な対応を取らないようにする為に、「同じ話を何度も聴く心構え」をして下さい。同じ話を何度も聴く事をストレスに感じるのは、「さっきも言ったよ」「何回言うんだ?」という思いがあるからですね。要するに「つまらなさ」がそういう対応を呼ぶわけですが、その対応では認知症の人が納得(=心理的満足)できない為にまた同じことを言う悪循環に陥ります。
また、通常そういう対応をする時は、1言2言で終わらせている事が多いですが、それではコミュニケーションが「半一方通行」になっています。これを会話として両方向のコミュニケーションとして成立させるために、同じことを聴く心構えがまず必要になるのです。
会話を膨らませるためには、介護者からの問いかけも必要ですし、相槌も適度に入れなければなりません。そして、言ってきたことについて返答しつつ、その会話から連想できるものについて介護者が話を膨らませて、認知症の人が納得できる状況を作る事で、満足感を得てもらいます。そうする事で不安感が無くなることや気が逸れることで、同じことを言う状況が改善します。
コミュニケーションとして考えれば、「ただ話をしているだけ」ですから上に書いてあることは何ら特別な事ではありません。しかし、話に付き合うという心構えが無いと中々難しいです。
[補足]
中には、〇〇回、同じ事を何度も言われたら、「それ先ほども言ったよ」と言ってくださいと指導している病院もあります。例えば松本診療所の松本一生さんは次のように話しています。「認知症の方に何回も同じことを言われると気が苛立ってくるので、5回同じことを言われたら、笑顔で「それ先ほども言ったよ」と言ってもいいのではないか」と仰っています。
「話しを聞く」という心構えを持ちながら、どうしても我慢ができなくなったら、「それ先ほども言ったよ」と笑顔で言ってもいいですね。
関心を持つ
最近、「ユマニチュード」というケア手法が注目されています。ユマニチュードは以下の4つのことを基本として成り立っています。
ケアの実施にあたっては
①見つめること
②話しかけること
③触れること
④立つこと
を基本として、これらを組み合わせて複合的に行う。wikipediaより引用
この手法では、話し掛けないことは存在を無視し、否定しているのと同じとされています。同じことを聞かれた時に返答しなかったり、一言で終わらせるのは存在を否定しているという事です。
さらに、ユマニチュードを忠実に実践するのならば「目を見ながら(目線を合わせながら)、話しかけること」が大切だということが分かります。あくまでも介護職員としての経験上の主観ですが、実際にこの手法でケアをすると認知症の人が落ち着いた時間を過ごす事が多いです。
まとめ
私は介護職員になりたての頃は認知症の知識が皆無だったのと、話を聴く心構えが無かった為にぞんざいな返答に終始し、結果同じことを何度も聞かれる悪循環に陥っていました。
この状況は認知症のご家族と周囲の人、両方にとってデメリットしかありませんから、同じことを何度も言われてイラッとした時は、是非この記事の事を思い出して、心を落ち着かせてから会話して下さいね。
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