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介護のプロはどのように入浴拒否の認知症の人に対応しているか

 

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●介護スタッフが持つ、入浴お誘いの「技」

 介護施設で必ずと言っていいほど「認知症の方の入浴拒否」が課題としてあります。デイサービスなど通所施設を利用している場合では、ご自宅ではなかなかお風呂に入ってくれないので「デイサービスで絶対にお風呂に入れてください!」と強く要望される家族さんも居られます。

 しかし介護施設は本人の意思を尊重しますし、ましてや強制的にお風呂に入れる事など不可能です。介護スタッフからすれば、「家族さんが言ってもお風呂に入ってくれないものを他人が言っても余計に入ってくれない」というのが本音でしょう。

 でもそこは介護のプロでもあります。拒否して入浴してもらえない方を何とか説得して入ってもらうという使命感が燃えるのもまた介護に携わるスタッフの心意気でもあります。また経験が長い介護スタッフほど、入浴拒否される方に気持ちよく入浴していただく「技」を持っています。

●そもそもなぜ入浴を嫌うのか?

 入浴を拒否される認知症の方の、その理由は十人十色です。ただひとつ言えるのはそのほとんどに、「入浴の意味・意義」を忘れてしまっている大前提があります。

 「お風呂に入ったら気持ちがいい」とか「定期的にお風呂に入って身体を清潔にしないといけない」という基本的な概念を忘れてしまっているためお風呂に入る意味や必要性が分からず「嫌だ」とか「面倒くさい」などと思ってしまって拒否されるケースが多いと思われます。

 またこれは認知症を患っておられない方にも当てはまることですが、麻痺や可動域制限によって脱着衣に手間がかかるので入りたくないとか、身体的な不利(アザがある、年老いた体を見られたくないなど)によって人前で入浴したくないというケースもあります。

●お誘いするタイミングも大事

 認知症の方にお風呂のお誘いをする時はタイミングも大切です。認知症の方は1日の中でも気分の浮き沈みの波があり、気分が乗っていない時にお誘いしても全拒否されます。

 その方の仕草や表情、発言内容などをしっかり観察して、気分が乗っているタイミングでお誘いすると案外とすんなり入浴してもらえるケースも多いです。

 例えばお風呂の順番が来てお誘いしたとします。ところが「お風呂に入らない」と拒否が…そこで世間話やその方の過去の仕事の栄光など気分が乗ってもらえそうな話を少ししただけでもう一度お誘いするとすんなり入ってもらえたりする事があります。

 その気分の波は人それぞれで、朝一でお誘いして拒否され、その後も何度もお誘いして昼過ぎにやっと入ってもらえるようになったりと1日がかりの方もいらっしゃったりします。

 それらを考えると、拒否のある方はできるだけ早めにお誘いし、拒否があっても根気よく何度もお誘いするタイミングを用意しておく事が大事です。

●どうやってお誘いするといいのか?

 時には嘘をついてみたり、ちょっと大げさな誘い方をしたり…拒否者の入浴へのお誘い方法はいろいろとあります。あまり良い方法とは言えないものでも、無理やりでない限りは「清潔保持」という目標を完遂したという意味では有りでしょう。

 例えば、「ちょっとあちらに見てほしいものがあります」と言って脱衣所にお連れしてみるなど。脱衣所に到着した時には「見てほしいもの」と言われたことを忘れておられ、「では服を洗濯しておくので脱いでください」と言って脱いでいただき、そのままお風呂に案内するといった荒業を使うこともあります。

 また、ご家族さんの名前を出して、「〇〇さんからお風呂に入ってもらってとお願いされています」と言ってみる場合もあります。この場合、その方の配偶者よりも息子さんや娘さん、お孫さんの名前を出したほうが効果があるケースが多いです。

 お金(お風呂代)を気にして入られない方もいらっしゃいます。その方には「入浴券」みたいなのを作って、「入浴券があるから大丈夫」と説明したりすることもあります。

 でもやっぱり一番いいのは、先に書いた「入浴の意味と意義」を説明して入っていただけたら一番いいので、「お風呂に入ったら気持ちいいですよ」とか「着替えがあるからお風呂に入ってきれいにして着替えましょう」などとお誘いして入っていただくのが一番理想です。まずはここから始め、拒否があったらいろいろな手段でお誘いしていきます。

●介護のプロはお誘いのプロ

 介護の仕事にはいろいろな業務があります。直接介護に関わることはもちろん、間接的な業務(洗い物・洗濯・掃除・調理など)も多く、要介護者の生活全般を担っているといっても過言ではありません。

 その中で、ヒトが生活をしていく上で必要な行為をしっかりと安全に行っていただけるようにサポートするのが介護の仕事であり、「お風呂に入る」という普通の行為を普通に行っていただけるようにサポートするのはとても大切なことです。

 そのため入浴拒否がある方に対しては、同じ介護スタッフ同士はもとより、ケアマネージャさんや家族さんとじっくり話し合って根気よく対応していく事が必要であり、大切なことです。気持ちよくお風呂に入っていただいてこそ、本当のプロの介護士であると言えるでしょう。

[参考記事]
「認知症による入浴拒否の原因は介護職員の若さだった事例」

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