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脳血管型認知症により暴力行為が収まらない男性の事例

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私は病院に勤務する看護師ですが、腹痛を訴え緊急入院したYさん(80代男性)のお話をします。
入院してすぐに血圧などを測定し、一般状態を観察したのですが、体温計を挟もうとしたとき、「何すんのよ!やめて!」と看護師の手をつかみ、爪をたて、もう片方の手で顔に殴りかかってきました。
80代とはいえ、かなりの力持ちで、こちらもケガをしないように精一杯です。
Yさんは、看護師が何かをしようとすると、反射のように殴りかかってました。
私たちはいつでも、2名以上でYさんの介助にあたらなければいけませんでした。

Yさんは元々は穏やかな人柄

Yさんは介護施設に入所されている方でした。
認知症になると元々の性格が逆の方向に変わることもありますが、Yさんの娘さんの話では、Yさんは昔はとても穏やかな性格でいらしたそうです。
認知症には脳の病気が原因の脳血管型認知症がありますが、Yさんは脳梗塞後に認知症を発症しました。
脳血管型認知症は感情が穏やかな時と不安定な状態が1日の中で起こり、比較的感情失禁が出やすい状態ではあります。
ですので、Yさんは脳梗塞を発症してから「易怒」という怒り易い症状が出てしまっているようでした。

Yさんはいつも緊張している臨戦体制

Yさんは何もしていないときはベッドに横になっています。
しかし、ひとたび看護師がそばに行くと、顔つきが緊張し、触ろうとすると、殴りかかってきます。
私は声をかけ「大丈夫ですよ。痛い事はしませんよ」と声を掛けますが、やはりすぐに手が出てきます。
きっと、何をされるか分からない、自分でどうなっているのか分からない、これからどうなるのか分からない、そんな世界に取り残されているのだと思います。
そんなときに、体に触られたら、身を守ろうとすることは当然のことかもしれません。

易怒に対する対応

いつでも脳が緊張している状態なので、眠りも浅いです。
夜間の中途覚醒が多く、覚醒すると、暗い中でどこにいるのか分からなくなり、大声を出します。
まずは、1日のうち数時間でも脳を緊張から解放してあげる必要があると思いました。
脳をリラックスさせるには、眠ることが一番です。
ある朝Yさんに「おはようございます」と話しかけると、辛そうな表情で「眠い。」と一言。
夜間眠れなかった様子が手に取るように分かりました。
入院する前からもしかたら、何日も何か月も熟睡していないのかもしれません。
まずは、眠るきっかけを与える必要があるので、睡眠薬を消灯の時間に合わせ、毎日同じ時間に服用するようになりました。
それと同時に昼間に病院の回りをなるべく散歩するように促し、看護師と一緒に20分くらいの運動を取り入れました。
その結果、比較的夜間眠れるようになり、すっきりした顔で目を覚ます日が多くなりました。

Yさんの本当の思い

夜間眠れるようになり、少しづつ表情も柔らかくなったYさんですが、それでもおむつを換える時、体を拭く時は嫌がり、殴りかかろうとする行為は収まりませんでした。
しかし、すべてのケアが終わると「どうもありがとうございました!」と今まで聞いたことが無い言葉を言ってくれるようになりました。
私たちは自分の身を守りながら、Yさんの体のことも考え、ケアをし、疲弊していましたが、その言葉を聞いて嬉しくなりました。
なぜなら、認知症になり、自分が今何をされているのか分からない、ここがどこなのか分からない、私達がだれか分からない、そんな状況の為暴力的になってしまうYさんですが、この時だけは昔穏やかだったYさんの人柄が垣間見れたからです。
私達は不思議とその言葉があれば、殴られそうになりながらも「まあいいか」と思えてしまうのです。
Yさんは、それからケアが終わると必ず、「どうもありがとうございました!」と言ってくださるようになりました。
睡眠が深くなり、ストレスが少なくなったことで、易怒の症状が出にくくなったのではないかと考えています。


[参考記事]
「脳血管性認知症ってどんな症状があるの?」

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