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認知症による捜索願は年間1万人。徘徊に気づいたら警察へ

 

 私がケアマネジャーとして出会った82歳の女性のお話です。女性の長男がある朝いつものように目を覚まして、朝食や朝の身支度の準備をしている時に女性の様子を伺うと、ベッドに姿が見えません。トイレにでも行ったのかと探しても見当たりません。

 それではどこか近所でも散歩に行ったのかと自宅周りを探して回りましたが見つかりません。これは様子がおかしい、と介護者は気づきました。

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認知症症状としての徘徊

 実はこの介護を必要とされる女性はアルツハイマー型の認知症を患っています。体の身体機能は悪いところがないのですが、認知症にはありがちな少し前のことでも忘れてしまう、そして徘徊という症状がありました。

 そのため、介護者はすぐに女性が立ち寄りそうなところを探し回りました。例えば公園や近所のコンビニエンスストアなど。自宅周辺で思いつくところは捜し歩きました。しかし、そうそう見つかるものではありません。

 なぜならいつ女性が自宅を出たのかということさえ分からないので、どこまで行ったのかを把握することができないからです。時間が経過すればするほど探さなければならない行動エリアは広がる一方です。

まずは習慣を考える

 介護者(長男)は女性の家族ということもあり、以前女性が朝のウォーキングを習慣にしていたことを思い出し、そのルートを探すことにしました。しかし見つかりませんでした。

 そうなると正直家族でさえもこれ以上は探す場所の特定は難しいです。いくら習慣としていた行動でも認知症の方は思いもかけないことをしてしまうことがありえるのです。

 いなくなったことが分かった時からすでに30分以上が経過しています。そのため、介護者一人で探すことが困難と思い、警察へ電話をして捜索願の届を出すことにしました。

捜索願からしばらくして…

 警察には女性の背格好や服装など手掛かりとなる情報を伝えました。当然出かけて行った時の服装などは分からないので、多分その服だろうなという目星が付くものを伝えました。

 そして、もしかして女性自らデイケアの事業所まで行ったのではないかとも考えることが出来ました。ただ女性一人で行ける距離ではないので、念のため事業所にも連絡をして何かあったら教えてほしいとお願いしました。そして担当のケアマネジャーにも連絡をしました。

 介護者である家族にとっては時間が経過するだけ女性がどうなっているのか不安が募ってきますが、こればっかりはどうしようもありません。自宅でじっと連絡を待つことにしました。

いなくなったことが発覚して1時間ほど経過して…

 捜索願の電話から30分、いなくなったのが分かってから1時間ほどが経過しました。そして家族の携帯電話に1本の電話が入りました。いつも往診や受診などでお世話になっている診療所からでした。救急車で運ばれてきました、という連絡でした。

 自宅から500メートルほどの所にスーパーがあります。そこで転倒し誰かに救急車を呼んでもらい保護してもらったとのこと。その時にお世話になっている診療所の名前を女性が伝えたそうです。

 救急隊員からは発見状況や体のことについて電話で説明をしてもらい、とりあえずケガはないということで一安心して女性がいるところまで迎えに行きました。

 本人はかなり気が動転しているようでしたが、医師、看護師から詳しい状態を聞いて特に問題はなさそうだということで安心して家に帰りました。

どうしても見つからない場合

 いなくなってから時間が経てば経つほど生命に関わる問題になっていきますので、ある程度探して見つからない時は警察に連絡すべきです。認知症による行方不明の捜索願は年間1万を超えており、これからも減ることはないと予想されます。

 また、捜索しても見つからないケースもあり、例えば保護されているけれども認知症による記憶障害で名前も住所も分からない場合です。厚生労働省のホームページに「行方のわからない認知症高齢者等をお探しの方へ」という項目があり、そこには以下のように行方不明の方の年齢や特徴などが明記されています。もしかしたら、ここに登録されているかもしれません。

まとめ

 今回は女性の無事が確認でき事なきを得ましたが、認知症の方にはありがちな事例です。いくらしっかりしているように見えても実は認知症の人だった、ということはあります。

 身近な家族でさえも、本人の行動を想像することには限界があります。介護者には的確な情報分析と判断能力が必要となるケースですが、なかなか困難です。ですので、そうなる前に、冬の寒い中いなくなった場合、昼にいなくなった場合など色々想定して、取るべき対応を考えておく方がいいです。

[参考記事]
「認知症の母は雪の日の徘徊でケガし、脳内に出血が」

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