Kさん(80代女性)は、若い頃は学生寮の管理人をされていました。学生さんの食事の準備をしたり、洗濯をしたりと世話をされ、自宅から離れて生活する学生から「お母さん」のように慕われていたそうです。二男二女をもうけられ、子育て、仕事にと頑張ってこられました。今はご主人に先立たれ、自宅で独居生活です。
血圧も血糖も高いですが、食事制限が上手くいかず脳梗塞を起こしましたが、幸い軽い症状だったため麻痺などは残りませんでした。また、歩行はパーキンソンの為、不安定です。
サービスを利用しながら自宅で生活
週に2回のデイサービスと訪問介護を朝、夕2回利用されていました。ヘルパーは、調理、掃除、更衣、デイサービスの送り出し、ポータブルトイレの洗浄、洗濯、服薬の確認でサービスに入っていました。食材や日用品は、家族が購入し自宅に置いていきます。
Kさんの認知症状で困ったこと
①その場その場では、上手く話を合わす事ができるのですが、人の名前は忘れてしまっていて全く分からない状態でした。娘のことは名前も顔も分かりますが、他の人が差し入れなどを持ってこられても、誰が持ってきたのか分かりません。
②歩行が不安定なのに、裸足で庭に出て草引きなどをしていることがありました。さらに外で転倒して青あざを作っていることもありました。本人に、危ないので外に出ないように話しますが、注意されると険しい顔をされます。
③ベットサイドのポータブルトイレで排便されるのですが、しっかりとふけない状態でベットに座ってしまうので、シーツや衣類の便汚染がかなりの頻度でありました。あまりにも便汚染がひどいので、パットが付いている介護用のつなぎ服を着用していただくことになりました。
しかし、ボタンを外して中に手を入れ、尿採りパットを抜き取ることが続きました。また、「これ(介護服)を脱がせろ!」と騒いでいることもありました。あまりにもつなぎ服がストレスになっているようなので、便汚染を承知の上で元のリハビリパンツと普通の服に戻しました。
④(3食以外に)何か食べようと台所に行くため、次の日にヘルパーが訪問すると冷蔵庫が開きっぱなしという事も多々ありました。パーキンソンなのに自分で動こうというKさんの意思を尊重したいですが、転倒の危険があるので、カロリーのあまり高くないお菓子や果物をベットサイドに置くようにしました。これにより、一人で動こうとすることは減りました。
⑤ヘルパーが訪問の最後に戸締りをするのですが、「昨日のヘルパーは戸締りをしないで帰った」「昨日から何も食べていない」などと訴えらえることがあり、家族はそれを真に受けられ、訪問介護事業所に問い合わせがあることもありました。訪問ノートが自宅に置いてあるので、ご家族にも目を通していただけるようにお願いし、トラブルもなくなりました。
家族の差し入れが困った
娘さん達が、Kさんのところに度々差し入れを持ち、訪問されました。Kさんは血糖値が高い方だったので、あまり甘いものなどはよくないのですが、差し入れにいつも「あんぱん」や「ようかん」「黒糖」などの甘いものを持ってこられ、枕元に置いて行かれます。それが、間食となり、食事を食べられない事がありました。
ご家族にも何度か甘いものの差し入れを控えるように話をしたのですが、「本人の好きなものを食べさせてあげたい」と思われるのでしょう、差し入れは一向に減りませんでした。ベットサイドにあるお菓子を一つか二つ残し、あとは台所に移動するようにしました。
訪問介護員と家族の関係
近隣に住んでおられる娘さん達も、お母さんのことを気にかけ、頻繁に訪問にこられていました。Kさんにとってはひ孫にあたる1歳くらいの小さな男の子を連れてくることもあり、Kさんもとても喜んでおられていました。
しかし、くるたびに子供のおむつや自分たちが食べたものをそのままにして帰ります。さらに、ポータブルトイレが汚れていたり、母親の衣類が汚れていても、「これは、訪問介護員がきれいにしてくれる」と一切片づけたりしようとされませんでした。
いくら訪問介護員がお金をもらっているからといって、全て任せてしまうというのはどうなんだろうと疑問に感じました。訪問介護員は「汚いことを何でもやってくれる家政婦」のように思っておられる方が多いように感じます。お金を払っているから何もしないではなく、ご家族と訪問介護員がお互い協力しながら支援していく事が大切だと感じました。
[参考記事]
「認知症によるうつ傾向が訪問介護、訪問リハビリで改善」
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