認知症対応型共同生活介護(グループホーム)で生活しているYさん(女性76歳)はアルツハイマー型認知症です。グループホームに来るまでは双子の妹さんと一緒に暮らしていましたが、その時からYさんは認知症を患っていました。
ある冬の寒い日にYさんの妹さんは亡くなられましたが、遺体は死後10日以上経った状態で発見されたそうです(もちろん、亡くなったことを誰にも連絡できなかったのはYさんの認知症のせいです)。Yさんはその間、ほとんど飲まず食わずの状態で保護され、こういった経緯でYさんはこのグループホームで生活をするようになりました。
Yさんは定年まで都内の病院で看護師として勤務していたのですが、このグループホームでも看護師として勤務をされていると思い込み毎日いきいきと過ごされています。ですが、認知症の進行はかなり進んでおり、会話はかみ合いません(しかし、何とか理解できます)。
先日、夜勤に入った職員から朝の引き継ぎの時に『昨晩Yさんの居室でタンスの引き出しをあける音がしたので伺ったところ、トイレットペーパーを口に含んでいました』と報告を受けました。
今まで異食をしたことのない方でしたが、おそらくその晩の食事を半分ほどめずらしく残されていたので夜間お腹が空いたのではないかという話となりました。もともと収集癖のあるYさんは、タンスの中・バッグ・ズボンのポケット・布団の下にまでもトイレットペーパーをしまっています。
誤飲を起こしては危険なので全て回収することにしました。職員Aは、認知症の進行の進んでいるYさんは回収したことに気が付かないのではないかと思い、Yさんには何も言わずに回収しました。ですが、Yさんは『ここには泥棒がいる』と少し不穏になってしまいました。トイレットペーパーとはいえ、Yさんにとってはとても大切なものです。
それ以来、職員は、必ずトイレットペーパーを回収するときはお声かけをし、できるだけ納得し同意を得たうえでトイレットペーパーを回収することになりました。
収集癖のあるYさんからトイレットペーパーを回収するとき、職員はYさんに丁寧に気持ちを込めて次のように伝えます。
『今日は古紙回収の日でYさんのこのトイレットペーパーを渡すと新しい紙に変えてくれるみたいですよ』
10回中3~4回と、半分には満たないもののトイレットペーパーを回収させてくれるようになりました。
また、タンスの中には服の少ない段にトイレットペーパーを多く貯めていたので、「タンスの中に服が入っていないと不安、もしくは隙間を埋めたいのでは」と考え隙間に入る分の洋服を用意しました。
これは、とても効果的でした。やはり、タンスの隙間を埋めたかったからトイレットペーパーを入れていただけで、洋服を用意してからはタンスからのトイレットペーパーの回収量は激減しました。
タンスにはトイレットペーパーを入れることは無くなりましたが、バッグやズボンのポケットにトイレットペーパーを入れる行為はまだ続いていました。
そのため次に職員が行ったことは布袋を用意することです。布袋は職員が自宅で使わないシーツを大きめにカットして縫い合わせたものです。その甲斐あって、Yさんはトイレットペーパーを布袋に主に入れる癖がつきました。
Yさんが布袋一か所にトイレットペーパーを集めてくれるおかげで、直ぐに回収でき、Yさんの誤飲のリスクも格段に減ったと考えられます。今後も何か起きた時は、職員の色々なアイデア・視点を現場にいかしていきたいと思います。
[参考記事]
「認知症の人の異食、食欲不振にどう対応しているの?」
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