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認知症による夕暮れ症候群が起こる理由とその対応について

 

 特別養護老人ホームに入所されて3か月のAさん(80代女性)は入所以来、夕暮れ時になると「家に帰らないといけない」「ご飯の準備をしなくちゃいけない」と言われることが度々あります。この症状は特別珍しいわけではなく「夕暮れ症候群」と言われています。

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夕暮れ症候群が起こる理由は

 生活の中で夕暮れ時は仕事が終わって家に帰ってきたり、ご飯を作ったりと慌ただしくなる時間帯です。入居者の方々はそれまでの生活の中で何十年とそのような時を過ごしております。夕方の忙しい時間、女性であればご飯を作ったり、男性であれば仕事が終わり家に帰ったりといった生活サイクルを繰り返し行っている為、それが身についてしまっているのです。

否定的な声掛けは逆効果

 認知症の人は最近の事は覚えていませんが昔の事は結構覚えています。そのため施設に入居したことを覚えていないケースが珍しくありません。そこで「お家はここですよ」と声掛けをしても「何を言っているの?私の家はここではありませんよ」となってしまうのです。

 本人の言っていることと真逆の声掛けをしても、本人の思い込んでいる事実と異なるのだから納得できるはずがありません。対応を間違えると大声で暴れたり、自分がなぜここに居るのか分からなくなり、パニックになられる方もいるので注意が必要です。

記憶に刻まれた事を変えるのは困難

 何十年と繰り返し行い、記憶に刻まれている事を「違いますよ」と言われただけで、「そうですよね」となられる人はいません。

 であるならどうすればよいのか、例えば「もう遅い時間なので今晩だけでも泊まっていってください。」と声掛けするだけで「それじゃあ今晩だけお世話になりますね」と言っていただけます。他にも「職員が忙しくてお家まで送っていくことが出来ないので今日は泊まってください」と職員の都合にしても構いません。

 それでも、家に帰ると言われるのであれば外に出てみるのも一つの手です。本当に送っていくのではなく外に出て散歩をして外が暗くなっていくことを実感して頂きます。それによりもうこんな時間なんだと分かって頂けます。その時に「大変です、暗くなってしまいました。今から家に帰るのは大変なのでここに泊っていってください。」と声掛けしてみるのもいいでしょう。

 そんな声掛けをしたら次の日に本当に家に帰れると思ってしまうのではないかと思われる方いるのではないでしょうか?悪い言い方になってしまいますが先述の通り認知症の人は昔の事を覚えていて最近の事を覚えていないことが多いです。たとえそれが直近であっても先ほど食べたご飯の事も覚えていない事があります。

 結果的には嘘の声掛けになってしまいますが、不安な状態が続くことで突発的な行動に出られる方もいるので、それを回避するため、落ち着いていただくために声掛けを行うのです。

 介護の現場に行くと必ずと言っていいほど遭遇する場面です。毎日続く事も珍しくない為、同じ事をなんども繰り返さない様にするために、どうすれば良いのだろうと考えてしまうかもしれませんが、以上のような場当たり的な対応しかできないのが現実です。

 もちろん、リクリエーションを増やす、他の入居者との会話を増やす、施設内のことを手伝ってもらうなど細かい対応方法もありますが、何十年と経験してきた事を対応を変えただけで、そう簡単に変わるはずがありません。

 場当たり的にはなりますが、認知症の特性を理解した声掛けを行うだけで落ち着かれるので続けて行ってください。

[参考記事]
「[認知症介護] 夕暮れ症候群による帰宅願望への対応」

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