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認知症の人が食事を食べてくれない時の対応(実例)

 

 Bさんは90歳代の男性で、5年前に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺の後遺症が残り、自宅で家族の支援を受けながら生活をしていました(脳梗塞が原因の脳血管性認知症も患っています)。家族は奥さんと娘さん夫婦、孫が2人で、主な介護者は娘さんです。

 Bさんは元々嚥下機能(飲みこむ機能)が悪く、しばしば誤嚥性肺炎を起こし入退院を繰り返していましたが、家族の支えもあって自宅で生活することができていました。

 しかし、ここ数カ月の間で奥さんが認知症と診断され介護が必要となったため、家族やBさん本人の意向によりBさんだけ特別養護老人ホームへ入所されました。

 Bさんは若いころは役所に勤めており、厳格な性格でほかの利用者や職員にいつも厳しく接していました。これは脳梗塞の影響により自分の体が思うように動かないこと、食事も満足に食べることができないという理由もあったのかもしれません。そこで、食事面だけでも満足していただこうと思い、色々工夫をして食事を提供しました。

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食事に関してのサポート

 Bさんの食事は嚥下機能が弱いため、そして脳梗塞の後遺症の影響のため、細かく刻んだものを提供しており、歯ごたえはほとんどなく、形は外見だけでは何か分かりません。いつも隣に座っているほかの利用者さんが食べている食事を見ながら「うらやましいな~。」とつぶやいていました。

 そのような食事が続き、Bさんは次第に食事の量が減り、入所して半年で体重が8キロも減ってしまいました。

 「このままでは健康面で問題が出てくるかもしれない」という看護師の意見もあり、Bさんの食事についての取り組みが始まりました。Bさんの家族に聞き取りを行なうと、Bさんは基本的に肉よりも魚が好きな方で、昔は自分で魚を釣りに行ってさばいていたそうです。

 その話を聞き、「まずは魚であると外見から分かるようにしてみたらどうか」という意見が出たので、刻んだ魚を型に入れて魚の形にして提供してみました。すると「久しぶりに魚がでたな~。」と言ってこれまでは半分も食べていなかった食事を完食されました。

 中でもBさんが一番気に入って食べてくれたのはお寿司でした。何が食べたいかを尋ねると、「まぐろ」と答えられたので、刺身を細かく刻んでシャリの上にのせて提供しました。Bさんは「うまい、うまい。」と言いながら、いつもの食事量の2倍以上食べておられました。

 その後も様々な形の型を用意し、「形で楽しめる食事」を提供し続けると、Bさんの体重は3カ月ほどで元の体重に戻っていきました。この取り組みで家族の方には「本当にありがとうございます。」と何度もお礼を言われていました。

 Bさんの人に対する厳しい姿勢は若干弱くなったくらいですが、これは他にも「自分の体が思うように動かないこと」などの要因があることですので、これで良しとしました。

まとめ

 この取り組みから、やはり高齢者にとって食事の時間は本当に楽しみな事の一つであるということが実感できました。Bさんの場合、毎日の食事を変えることは手間もかかるため、週に2回の目安で上記のような食事を提供するようにしています。

 この他にも、食事のメニューを一品ずつ書いて提供して、何の材料を使って、どういう味を付けているのかを知ってもらったり、一品ずつコース形式にして提供していました。

 一品ずつ提供することでいつもはご飯しか食べない、もしくはおかずしか食べない、という偏食のある利用者でも全量食べることができるようになることが多いです。

 もちろん、職員の負担を考えるとこのような取り組みは大変ですが、利用者さんの喜ぶ顔や楽しそうに食事を食べる姿を見ていると、やってよかったと思います。

[参考記事]
「脳血管性認知症ってどんな症状があるの?」

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