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認知症(アルツハイマー型と脳血管性)が合併している人への対応

 

 以前、有料老人ホームで介護士として勤務していました。様々な人が、自分の思い思いに生活をしているので、介護士もそれに合わせて動くことが必要な反面、居室で過ごされる方に目が届かない時間帯も多くあります。

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深夜に転倒してしまったN様

 N様(80代の女性)は元々軽度のアルツハイマー型認知症を持っており、日常生活として居室で過ごすことが多い方でした。職員が居室に伺うと、職員の顔を忘れてしまっていても「自分は入院しているから」と自分が入院していると認識し、笑顔で対応してくれました。

 足元にふらつきがあり、一人での行動に不安もあったので、ご家族とご本人の意向もあり、無理にフロアに出ていただくことはありませんでした。職員の目の届く居室を利用していただき、いつでも介護士だけでなく職員がN様の姿を確認できるようにしていました。

 しかし、ある日の深夜、職員が少ないときにN様はベッドとテーブルの間で倒れてしまい、動けなくなっていました。転倒した可能性が高く、すぐに救急搬送・入院となりました。

 ご家族の方々は、「普段の生活や時間帯から仕方ない事故」と言ってくれましたが、退院後、脳血管性認知症になっていることが分かりました。複数の認知症が合併して現れることを混合型認知症と言います。N様の場合にはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の2つです。

脳血管性認知症の症状も見られるように

 脳血管性認知症の中核症状としては、脳のどの部分が障害を受けたかによって分かれますが、N様の場合脳血管性認知症の一番の症状は、一日中、ずっとぼんやりと過ごし、表情が全くない状態(抑うつ状態)になってしまったことです。また元々悪かった歩行が手引きがないと難しくなっていました。

 アルツハイマー型認知症と似たような症状がある脳血管性認知症ですが、今回の転倒からそのような症状が出たことは明白であり、新しい対応が必要だと感じられました。

 また、元々食にこだわりがあり、施設から出される食事も自分で調味料を使いわけ、味をアレンジしていたのですが、それも全く手を付けない状態になり、体調の面でも注意が必要になっていました。

混合性認知症の対応としてご家族と密に相談

 ご家族と相談したところ、これまで以上に密に接してほしい・少しでも食事を摂ってほしいといった要望があげられました。

 しかし、職員が居室に顔を出す時間を増やすことは難しいので、フロアで皆さんと食事をするのはどうかという意見が出ました。フロアで食事を摂ることによって、他の利用者様との関わりもできますし、介護職員も食事の時間はフロアに人数いるため、N様の様子を見られる状況が作れるという案でした。

 ご家族の同意を受け、実際に食事の時間だけでもフロアに出てもらうようになったことで
*N様と仲が良かった職員が調味料で一緒に食事のアレンジをするようになり、その際に声掛けする時間が増えた

*手が止まっていたり、食器をもっていないときの声掛けが細目にできた

*他の利用者様が話しかけてくださることにより、自分から一口は食べるようになった
など多岐にわたる食事の面、見守りの面での解消ができました。

逆に
*部屋に戻りたがってしまう
*すぐに不機嫌になってしまう
といった日もあり、元々の生活からの変化にN様がついていけていない部分もありました。

次第に笑顔がみられるように

 退院してから数か月が経ったころ、N様はフロアでご飯を食べることに抵抗なく、自分から動くようになってくれました。また、好きな食事がでたときは一番最初に「N様が好きな〇〇ですよ」などの声掛けをすることで、全量ではなくとも進んで食べてくださるようになりました。

 食べない時は介助をしても絶対に食べない状況でしたが、ご家族が持ってきたゼリーなどで対応することもできるようになり、そういったときは笑顔を見られるようにもなり、転倒後からの脳血管性認知症の進行を遅らせれているのではないかと判断できました。

 今回はN様のご家族に理解があり、早期の対応ができたことにより、認知症の進行を防げたケースを紹介しました。

[参考記事]
「脳血管性認知症ってどんな症状があるの?」

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