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認知症高齢者の介護の実例「ゴミ箱をトイレと勘違い」

 

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これまでの経緯

  自宅で生活されている80代のAさん女性は、長男との二人暮らしのため、長男が就労のため外出する日中は、いわゆる日中独居となる生活を送っています。

 自宅での身の回りのことは自ら行えている状況でしたが、認知症による記憶障害が確認できているため、この進行予防を主な目的として週に2回の通所介護サービスと、長男の出張などの際、2泊3日程度の短期入所サービスを利用していました。

 Aさんの長男であるBさんは、ある時仕事から帰宅すると、Aさんの部屋から尿臭がすることに気づき、失禁や排泄の失敗を疑ったそうですが、そうでもなさそうなため、その発生場所を注意深く探してみると、部屋の隅にあるゴミ箱へ小便が溜まっているのを確認したそうです。

 また、その数日後には、尿臭ではなく便臭があったそうで、再びそのゴミ箱を確認すると、ちり紙の下に便も入っていることが確認できたそうです。その時点では、Aさん自身に確認しても明確な答えがないため、ショックを受けたBさんはAさんに強く注意し続けるしかなかったようです。

問題行為の把握と確認

 デイサービスの利用時、「連絡帳」(家族と事業所との間でその日の健康状態や様子などを記録する帳面のこと)に「ゴミ箱へ排泄してしまう」という困りごとが記されているのを確認した私は、スタッフへこの事実を申し送りするととともに、特に排泄面に関して注意して観察するように指示をしました。

対応に向けての課題抽出

 「連絡帳」へ、施設利用時における今日の様子を記すため、各スタッフから情報を収集すると、まず、排泄前には特に落ち着きがなくなり、周りを見渡す仕草や何かを探して歩き出す行為が見られることが確認できたとのことでした。

 また、数回の利用を経て、年配のスタッフが気づいたことは、「トイレ」と書かれたステッカーの横へ、「便所・かわや」と大きく張り紙をしたところ、スタッフの誘導を必要とせず1人で用を足すことができたということです。

 このことからAさんは、便尿意はあり、自らトイレへ行って用を足すことができる身体機能は保有しているのですが、「トイレ」という文字の認識がしづらくなって来たために生じた問題行為ということが確認できました。

解題解決に向けて

 私は、デイサービスの帰宅時に「連絡帳」にも記しましたが、介護者である長男のBさんが帰宅する頃にこのことを伝え、トイレのドアはもちろん、部屋のドアや廊下にも「便所はこちら⇒」といった張り紙をしてもらうよう伝えました。

 また、ゴミ箱へは「ゴミ箱」と張り紙をしてもらうようにも伝えました。

解決策の効果

 後日、「連絡帳」にはゴミ箱へ用を足してしまう問題行為はなくなった旨の一行が記されており、以降、この行為に関する相談はなく、サービス担当者会議でBさんにお会いした時も、その行為は「今のところ無事です」という回答をもらっています。

 Aさんは、「便所」の場所が分からず、困った挙句に「おまると認識したゴミ箱」へ用を足していたものと推測できます。

 Aさんは、私が勤務するデイサービス事業所以外にも、短期入所サービスを利用していることから、そこでも問題行為が生じないよう、この事例を報告し、Aさんの混乱を回避する環境づくりを行いました。

[参考記事]
「便を壁に塗ってしまう弄便行為がピアノと料理で改善」

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