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生活保護の身寄りがない認知症の方を一人にさせない取り組み

 

 アルツハイマー型認知症の70代のA様(男性)の奥様は、強度の認知症と癌を患っていました。二人は生活保護世帯で、夫婦二人で認認介護生活を送っています。奥様はご主人に対しても誰だか分からない状態です。当然、ケアマネージャーや施設職員がご自宅に訪問した時も、「あんた誰」と大きな声で叫び、「早く出てって」、「早く帰れ」と繰り返します。

 A様は、自宅で奥様の介護をしながら日々、過ごされています。A様は介護施設を利用しないで、奥様がデイサービスを利用している時間、のんびりと自分の好きなことに取組まれています。ケアマネージャーからの提案で、軽度の認知症があるA様に対し、自宅に一人でいるよりは、デイサービスで多くの方と接する方が、精神的にも良好との判断で、サービスを利用する事となりました。

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【施設では認知症の症状が明らかに】

 A様は、とても真面目で大人しく、女性から人気があります。他の利用者もA様を暖かく見守っていただき、施設全体がよい雰囲気です。認知症の影響ではっきりと話すことも出来ないため、やや会話が少なめです。

 しかし、その少ない会話の中で同じことを何度が繰り返したり、同じ動作を続けることもあります。例えば機能訓練の平行棒運動の際、足を上げる運動(右足が終わったら左足)を順番と回数を決めて行いますが、ずっと右足のみ行い続けます。声掛けしてA様に「右足、何回目ですか?」と尋ねると、「何回だっけ」と笑顔で話します。明らかに規定回数以上行っています。そこで、職員が必ずA様と1,2.3と一緒に声を出して回数を数えるようにしています。

【奥様の死】

 奥様はがん患者でA様が利用開始した時点で、余命6カ月でした。奥様が他界した後、A様の認知症の症状は急に進みました。他界する前後は、「とても疲れた」と話し、「やっとのんびりできる」とも話していました。いままで介護をしてきた苦労からほっと解放された時に、A様の認知症が進行しました。今までは自転車に乗り買い物に行けたのが、帰ってこれなくなりました(今どこにいるのか分からないという見当識障害)。

 掛かりつけ医は「奥様の他界が脳に影響を与えたのではないか」とのことでした。奥様の死に対してショックを受けている雰囲気は感じられませんでしたが、心の奥底では大きな悲しみがあったのでしょう。

【生活は一人】

 ケアマネージャーと相談し、A様が今後、一人で生活することになるため、ヘルパーを起用し、少しでも家事の支援、そして、生活の様子を把握する為に早々に利用を開始しました。同時にデイサービスの利用回数も3回に増やし、多くの人と接する機会を増やことにしました。

 一人でいる時間が増えると、認知症が進行しやすいとの判断から、ケアマネージャー及び施設職員がしばらく見守る方向で対応しました。実は、A様には家族が全て他界しており、身寄りがない状況です。そうした背景もあり、ケアマネージャーと協力し対応しました。

【いつまでもこの状態は続かない】

 デイサービスで支援できる事は当然ですが利用している時間内だけです。それ以外の時間は一人です。認知症が進行しているA様にとって、生活する上で火災、事故等のリスクが高くなりました。このままでは、アクシデントが起きてからでは取り返しがつかないとの判断から、グループホームに入居する事になりました(自治体の補助金があり、生活保護世帯でも入れるグループホームです)。

 グループホームでは、24時間、介護職員が見守りを行い、他の利用者と協力して生活を送る点で最適な場所でした。現在も元気よく過ごされています。認知症の進行を遅らせるには、多くの人のふれあいが大切であり、協力できる環境作りが必要です。

[参考記事]
「グループホームの入居条件と特徴」

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