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レビー小体型認知症の症状である幻覚とパーキンソン症状

 

 Sさん(80代 女性)は、息子さんとの二人暮らし。

 移動は車いす、排泄・更衣などは一部介助が必要でしたが息子さんの献身的な介護により、精神状態・健康状態共に良く、とても穏やか。

 週に2回、デイサービスに通っていましたが、職員にもいつも笑顔で、優しく声をかけてくださる方でした。

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体調の変化と共に現れた症状

 Sさんは、冬の寒い時期に肺炎の為、入院されることになり、デイサービスをしばらくお休みしていました。

 そんなSさんに、レビー小体型認知症の症状である幻覚(幻視)が出始めたのは、退院後、久しぶりにデイサービスに来られた時でした。

 そのときのSさんの表情は険しく、以前のような笑顔はありませんでした。男性を見ると「あいつは泥棒だ」と机をたたいたり、急に涙をながしたりと不穏な様子でした。いままで穏やかだったSさんからは、想像もつかないほど、暴力的な言葉がSさんの口から飛び出るのです。

決まった時間に起こる幻覚(幻視)

 午睡中に目を覚まし、一生懸命何かを手で払うような仕草をしておられたため、職員が尋ねると「虫が来る。海から虫が来る!ほら足のところ。」と怖がり、険しい表情をしておられました。

 この時のSさんは、本当に怯えておられ、私たち職員はその恐怖の中にいるSさんを、早く助けたいと思いました。

 そこで、職員にも時間的に余裕があったため、落ち着かれるまでSさんのそばにいることにしました。決してSさんの言葉を否定することはせず、「虫が見えるんですね。怖かったですね。大丈夫。一緒に、退治しますからね。大丈夫。大丈夫。」と虫が見える足の所をさすりながら、声をかけ続けました。

 30分位すると、Sさんはだんだん落ち着かれ、眠りにつかれました。中には、「虫なんていませんよ。だから大丈夫。」と声をかける職員がいましたが、その言葉を聞いたSさんは、余計に興奮し、分かってもらえない気持ちを怒りとして表出するばかりでした。

パーキンソン症状による不穏

 この頃から、だんだんとパーキンソン症状が出始め、嚥下機能も低下しており、食事はミキサー食に変更になりました。

 パーキンソン症状は、筋肉が硬直したり、手や足が震えたりなどの症状が現れますが、レビー小体型認知症の特徴の一つです。

 はじめの頃はご自分で召し上がっていた食事も、「こんなもの、食事じゃない!こんなもの食べさせるなんて、どうなっているんだ!」と立腹し、食事を拒否されるようになっていきました。

 しかし、健康状態を考えると、栄養は摂取していただきたい職員は、どうしたら食べていただけるかを試行錯誤しました。

 すると、一人の職員が、Sさんは甘いものが好きという事を思い出しました。そこで「Sさん、お食事にこんなものお出ししてごめんなさい。お食事は止めにして、甘いものを食べませんか?」と、デザートのヨーグルトをすすめました。すると、スムーズに、召し上がったのです。

 そこで少ししてから「これも、箸休めにいかがですか?」と、副菜の小鉢を手渡しました。すると、これも、2~3口召し上がったのです。

 それからは、Sさんの食事は、デザートと食事を交互に召し上がっていただくように介助しました。デザートと食事を交互に食べるなんて、あまり良い事ではないのかもしれません。

 しかし、Sさんの命をつなぐため、Sさんに嫌な気持ちをさせずに、食事を召し上がっていただくためには、この方法しかありませんでした。

信頼関係があってこその言葉かけ

 幻視があったとき、Sさんに対する言葉がけは決まって「大丈夫。大丈夫。」でした。この言葉は、もともと、Sさんの口癖でした。それを職員は皆知っていました。「大丈夫 大丈夫」と体をさすると、落ち着きを取り戻されるのです。

 食事にしても、Sさんが甘いものが大好きだと知らなければ、先にデザートを食べていただくという発想は無かったと思います。

 ケアに大切なのは、日ごろの関わりの中で、ご本人をしっかりと知っておく事。信頼関係をしっかり気づいておくことが大切だと改めて気づかさせました。

[参考記事]
「レビー小体型認知症ってどんな症状があるの?」

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