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理解力の低下により介護拒否をする認知症の人への対応

 

 Tさんは奥さんと自宅で二人暮らしをしていましたが、物忘れがひどくなってきていた為、認知症外来に受診すると、アルツハイマー型認知症と診断されました。

 奥さんがTさんの面倒を見ながらなんとか自宅で生活をしていましたが、認知症の症状が進んでいるのか、だんだんと奥さんに強く怒るようになってしまいました。

 理解力の低下も見られていた為、奥さんが色々話してもしっかり把握が出来ない事にイライラしていたようです。

 このままでは奥さんが倒れてしまうと心配した家族は、Tさんを介護付き有料老人ホームに入居させる事を決めました。

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施設入居後

 介護付き有料老人ホームに入居すると、自宅ではない状況や家族が近くにいない事は理解出来るので、それゆえ帰宅願望がとても強い状態でした。

 また、介護拒否も強く見られており、特に入浴への誘導は大声をあげて「入らない!」と怒ってしまいます。また、食事の時間や場所の説明をしていても、「いらない!」とこちらも拒否をされてしまいます。

 介護職員もそれでそのままほっておく事は出来ません。何度も職員を変えながら説得していきました。しかしその状況が続けば続くほど、Tさんは頑なに拒否をし続け、最終的にその日は一日居室から出てくる事はなく、トイレの確認や食事も受け付けてくれませんでした。

Tさんの性格を知る事から始める

 終業時間終了後に、ケアマネジャーさんが書かれたTさんの自宅での生活歴を再確認させてもらいました。

 そこには「理解力の低下が強く見られるようになり、奥さんに強く当たるようになってしまった」と、記載されていたのです。そもそも入居する前からもっとしっかりと情報を確認し、対応について話し合う事が大事だったと後悔し、翌日から対応方法の変更を職員と話し合う事にしたのです。

翌日からの対応方法

 前日の夜の状況を夜勤者から確認すると、相変わらず拒否は強かったようでした。しかし夜勤者が一度「夕食を取っておいてあるので、お腹がすいたら声かけて下さい。」と言うと、素直にフロアまで出て来てくれたと言うのです。

 昨日の生活歴の情報も含め、Tさんの対応方法を決めました。
・声掛けは1回だけにする事

・忘れてしまう可能性もあるので、内容を紙にも書いて渡す事
この2点を守ってTさんに対応をする事が決まりました。

 その後、職員は10時のお茶の時間や食事の時間が近づくと、
「お茶の時間ですからよかったら来てください。」
「そろそろ食事になるので、もしよかったら食堂でお待ちしています。」

 このような声掛けと同時に、「招待状」のような物を渡して、そのまま居室から退室することにしたのです。するとTさんはある程度の時間になると、居室から出てくるようになりました。

 表情はまだまだ固いですが、食堂の席を案内すると、他の利用者と少し恥ずかしそうに会話をされたりしていたのです。

対策の鍵

 大事なのは情報収集です。理解力の低下をしっかり把握していれば、最初からTさんに対してたくさんの事を聞いたり、説得する事はしなくてよかったのです。

 中核症状の理解力が低下してしまうと、あまりに長い話は理解出来ないのです。その為1回だけ話す。それも短く簡潔に行う事が大切です。また、Tさんの中でゆっくり理解してもらう為に文字で確認出来るようにするのも大事な対応となります。そうすれば自分で時間をかけて理解してくれるのです。

[参考記事]
「オムツ交換の拒否が強い認知症の人への対応。言葉を変えたら態度に変化」

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