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認知症による徘徊の対応には徘徊の目的を知ることが第一

 

Mさんは奥さんとの二人暮らしで、身体的には、杖歩行でどこまでも歩けるほどの能力をお持ちでしたが、認知症があり、家の庭で、(本人がいらなくなったと判断した)布団を燃やしたり、廊下で尿をしたりされていました。

その後、Mさんは特別養護老人ホームへ入居することになりました。入居されると、日中は、畳に寝転がりテレビを見たり、職員と喋ったり、催し物に参加されたりと落ち着いた生活をされていました。トイレも声掛けすれば、失敗がなく、施設での生活を見られた奥さんは喜ばれていました。

ただ、問題が一つありました。徘徊です。ときどき施設から出ようと玄関まで行き、職員に止められることがありました。素直に部屋に戻られることもありましたが、ときには杖で職員を叩いたりして、無理やり出ようとしていました。

徘徊の頻度が毎日のようになったある時、遅出の職員がMさんを車に乗せて施設に連れてきていました。Mさんは職員の隙をつき、外を徘徊していたのです。そこに、遅出の職員がたまたま見つけ、車に乗せてきたという訳です。

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~徘徊について~

「徘徊とは、無目的にさまよい歩くこと」とよく教科書等には書かれていることが多いです。ですが、実際に現場で働かれている介護職の方々は、『無目的』ではないことの方が多いと感じていると思います。

徘徊をしているお年寄りに聞いてみると、散歩に行きたかったり、家に帰りたかったり、仕事をしに行こうとされていたりなど、そのほとんどに目的があるようです。

徘徊は家の中だったり施設の中だったりを歩き回られる分には、問題になる事はありませんが、外に出られた場合、事故に合ったり、行方不明になったりする恐れがあり、問題となります。

そうした事故等に合った場合、介護者が民事上の責任を負う可能性もあり、徘徊の対策として、どうしても閉じ込めてしまうことが通常の老人施設では行なわれています。私たちも出ようとするMさんを施設に閉じ込めてしまっていました。

そして、今回の施設からの抜け出しにという問題になったのです。道路で事故に合わなくてよかったと思いますが、対策をしなければなりません。

~徘徊の対策~

今回のMさんの問題を受けて、職員間で話し合いがありました。もともと、玄関を通るとセンサーに反応して、チャイムが鳴るようになっていました。玄関横には事務所があり、日中は職員がいるので、気づきます。ですので、Mさんは、窓から出たのかもしれません。

窓の鍵をMさんが開けられないようなものにしようといった意見やMさんの靴にGPSをつけようといった意見が出ました。また、徘徊を止めようとするときは杖を振り回し暴力的になるので、男性職員がすぐに対応できるようにしようという「力には力を」的な意見も出てきました。

そこに、ある職員が、「家に帰りたいんだったら、家に送って行ったら?」と言ってくれる職員がいました。話し合いの結果、徘徊を止めようとするのではなくて、徘徊を助けてみることにしました。

今度、徘徊しそうになったら、奥さんに電話し、家に連れて行くことにしました。前もって奥さんには電話し、Mさんを外出させてもいいかを尋ねると、「数時間だったらいいです」とのことです。施設での落ち着いた生活を見られて、安心されていたのでしょう。

~徘徊、ふたたび~

いよいよ、徘徊のときです。玄関まで出ようとされているMさんに、「どこまで行かれますか?」と聞くと、「家に帰る」と言ってきました。

奥さんに電話し、家にいるとのことなので、連れて行くことになりました。Mさんは、「家に連れて行きます」と言って、車に乗せたときから笑顔です。

Mさんは久しぶりの我が家に着き、夕方迎えに行くことを約束し、奥さんとの時間を過ごしました。夕方、奥さんから想定外の電話がありました。泊めてみることにするというのです。結局、1泊2日の外泊となりました。その間、問題行動はなかったそうです。

~外泊後~

徘徊を助け、外泊されて帰ってきたMさんは、それまで毎日だった徘徊はなくなりました。外泊から帰ってこられた時に、Mさんと次の外泊予定を約束をしました。

そして、次の外泊予定日を書面に残し、部屋に置く事にしました。それまでに家に帰りたくなったら、抜け出さずに職員に言って下さい、という文言も書いておきました。その後、数か月たっても徘徊はされていません。

~まとめ~

今回のMさんは、家に帰ろうとするのを無理やり止められようとするあまり、杖を振りかざし、毎日の徘徊、施設からの抜け出しになったようです。

Mさんの気持ちとしては、施設に入ったら、家に帰る事ができない、帰ろうとしたら止められる、そうした不安が家に帰ろうとする徘徊を助長させていたのかもしれません。

ご本人の思いを大事にし、認知症であっても、分かりやすい合意形成をすることがご本人の自尊心を保ち、落ち着いた生活を送る上で重要だと認識されたケースになります。

[参考記事]
「認知症による徘徊を防ぐためには興味の対象を探すこと」

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