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認知症による収集癖の対応事例。原因は不安や孤独感

 

 アルツハイマー型認知症のHさん(79才女性)には、見当識障害や、理解力判断力の低下が見られます。そして収集癖があり、利用しているデイサービスのトイレットペーパーを大量に自分の服の中に詰めます。この収集癖は何かの訴えではないのか?と思い、考えてみました。

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●Hさんの行動

 Hさんは週3回、ご主人と一緒にデイサービスを利用しています。自分がデイサービスにいる、という状況を理解できず、不安そうな表情をされているときがあります。そんな時には必ずご主人に「ここはどこ?いつ帰るの?」と聞きます。ご主人は、認知症はありますが、軽度であるため、自分がデイサービスに来ている、という状況は理解しています。

 なので、Hさんに対して、「お前は何を訳のわからないことを言っているんだ!」と怒鳴ります。Hさんはそんなご主人とのやりとりのあと、必ずトイレへ行きます。そして、用を足すことはなく、大量のトイレットペーパーを服の中に詰めます。

 その他にも、ご主人が、お風呂のため、席を離れるときにも、同様にトイレットペーパーを服の中に詰めます。そのトイレットペーパーを家に持ち帰ってしまうため、ご家族から「部屋がトイレットペーパーで散らかっていて困る。」と相談を受けました。

 職員がHさんに「そんなにたくさんトイレットペーパー持ってどうするんですか?」と聞くと、Hさんは険しい顔になり、「持ってないわよ!私を泥棒だと思っているの!?」などと強い口調で言います。

●収集癖の起きる原因

 見当識障害や、理解力判断力が低下しているHさんは、「なぜ私はここ(デイサービス)にいるのかしら?何時に帰るのかしら?お迎えに来てくれるのかしら?」と、不安がたくさん。その不安を、ご主人に話すことで和らげています。

 そのご主人がお風呂やトイレで不在だったり、Hさんに対して怒鳴ったりするようではHさんの不安は和らぎません。職員がどう言葉かけをしても、ご主人の言葉でなければ納得しません。

 Hさんの認知症の進行により、ご主人との意思疎通が取れなくなってきたことが、Hさんの気持ちを不安定にさせる原因だと思いました。そして、その不安や孤独感、寂しいという気持ちを紛らわせるために、トイレットペーパーを集める行動をとっているのではないか、と私たちは考えました。

●収集癖の対応策

 まずは、その不安や孤独感を減らすための対応策を考え、実行しました。

 ご主人との会話中、二人の会話が成り立たず、ご主人がイライラしてきていると感じたら、職員がさりげなく間に入り、「Hさん、大丈夫ですよ。4時になったら、ご主人と一緒の車に乗って帰りますからね。私がお家まで送っていきますよ。」と話します。

 職員と一対一では、職員の話に納得されないHさんですが、隣にご主人がいれば、職員の話に納得してくれました。その後はトイレットペーパーを集めに行くこともなく、ご主人と穏やかに過ごされていました。

 ご主人がお風呂やトイレの間は、Hさんをお散歩や洗濯物干しなどにお誘いしてみました。お散歩は「お父さんと行く。」と、ご主人がいなければ行こうとしません。しかし、洗濯物干しは、職員と一緒にやって下さいました。これは、家事はご主人ではなくHさんの仕事という認識があるからだと思います。洗濯物を干し終えて、お風呂やトイレから戻られたご主人を見つけると、すぐに隣に寄り添い、ゆっくりと二人でお茶を飲まれていました。

 このように、ご主人との間に、職員がさりげなく入ることや、家事をお願いすることで、Hさんの不安や孤独感を減らすことができ、トイレに行く回数がどんどん減っていき、最終的には、トイレットペーパーを集める行動は取らなくなりました。

 行動を制限するのではなく、その行動をとる原因を考え、その原因を取り除くことが解決の方法になると分かりました。

[参考記事]
「紙の収集癖がある認知症の女性への対応。お尻を拭いた紙も収集」

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