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認知症による失禁への対応と心のケア

 

 認知症のあるSさん(91才女性)は、現在長男夫婦(長男、お嫁さん、お孫さん)と生活されています。デイサービスを月曜日から土曜日まで利用されています。

 認知症は軽度であるものの、進行に伴い、失禁の回数が増えてきています。家で、失禁したことをお嫁さんから責められたそうで、
デイサービスで失禁するたびに「また漏らしちゃった…また怒られちゃうわ…」と落ち込まれています。失禁が増えてから、Sさんの表情も暗くなりました。そこで失禁を減らす方法を考えました。

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認知症と失禁の関係

 尿意や便意の感覚が薄くなったり、尿意便意を感じても「トイレに行く」という行動に移すことを忘れてしまったり、トイレの場所が分からなくなったりと、認知症と失禁は深い関係があります。

 Sさんの場合は、失禁しているパットを見て「あぁ…また出ちゃってた」などと言われていることから、尿意や便意の感覚が薄くなっていること、そして「トイレはどこでしたっけ?」と職員に尋ねてくることがあることから、トイレの場所が分からなくなるときがある。この2点が失禁の原因であると考えました。

 失禁を減らして、Sさんの笑顔を取り戻したい!そのためには何をしたら良いのか、職員会議で話し合いました。

失禁を減らして笑顔を取り戻すために

 まず、尿意や便意の感覚が薄くなっていることへの対応策は、時間を見て声をかけることです。それまでSさんは、職員によるトイレ誘導の対象になっていませんでしたが、これからは時間を見て声をかけることにしました。

 トイレ誘導対象の方の名前と、尿、便の状態などを記入する表を作り、職員全員で情報を共有できるようにしています。Sさんは、職員が声をかけると「教えてくれてありがとう」と言われ、トイレへ行かれます。これによって失禁は減りました。

 トイレの場所が分からなくなるときがあることへの対応策は、まずは大きな目印を作ったことです。トイレの扉に大きく「トイレ」と書いた紙を貼りました。これにより、トイレを探しているときでなくても、トイレの近くを通ると「ちょうどトイレの近くまで来たし、トイレに寄っていこうかしら。」と、ご自分からトイレに行かれることがありました。

 もう一つはSさんが何かを探している様子だったらすぐに声をかけることです。Sさんがトイレを探しているときに職員が声をかけるとSさんは、「トイレを探していたの。連れて行ってくれる?」と安心されたような表情をされていました。

 職員による声かけと、トイレの場所を分かりやすくすることにより、Sさんの失禁は減りました。

 そして大切なことは、失禁してしまったときの心のケアです。Sさんは、お嫁さんから失禁を責められて傷ついたと話されていました。元々、お嫁さんとは良い関係を築けていないため、その話が事実かどうかは分かりません。

 しかし、Sさんが、失禁にショックを受けていることは事実です。失禁に気づいた時、本人が傷つく発言や、本人を責めるような発言をせず、自尊心やプライドを守る優しい言葉かけをすることが大切です。

まとめ

 Sさんは、パットを交換するたびに落ち込まれていましたが、失禁の回数が減ったことにより、落ち込むことも減り、以前より表情が明るくなりました。

 排泄問題はデリケートな問題です。失禁をして一番傷つくのは本人です。それをきちんと頭に入れ、介助することが大切だと思います。

[参考記事]
「認知症による失禁や弄便(便を壁に付けるなど)に対する対応」

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