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ショートステイでの物盗られ妄想のある認知症高齢者への対応

 

 短期入所生活介護施設(ショートステイ)を定期的にご利用されている80代女性のSさんのお話しをします。若い頃は自営業で卸問屋と小売業を営まれていました。そのため、非常にお話好きで、愛想よくニコニコしており、物腰も非常に穏やかな方です。

 ただ、Sさんには物盗られ妄想と非常に強い心配症がありました。いつもお迎えに行った際にも「〇〇は入れたかしら?あら、××を忘れた。」など道中ずっと言われます。実際にはきちんとご家族の方がご準備されていて、必要なものは全部あるのですが、常に不安感を抱いている状態です。

 その上、物盗られ妄想もあり、ショートステイが終わり帰る際には、「お金をもっと持ってきていたはず。ここにいる間にどこかで無くした。誰かに盗られた。」などという発言が、しばし見受けられます。

 そのため事前にSさんや家族にもお金などの貴重品類は持ってこないようにお願いをしていましたが、実際は、カバンのポケットの中に小銭が入っていたなどということがしばしばあります。

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物盗られ妄想や心配性に対する対応

 そこで、きちんとご入所の際に持ち物を隅々まで一緒にご確認をさせていただき、写真に撮ることにしました。お金もしっかりと持ち物リストに記載し、金庫でお預かりをさせていただく、という方法を取らせていただきました。

 しかし、退所の際には、先ほど書いたように「お金をもっと持ってきていたはず。ここにいる間にどこかで無くした。誰かに盗られた。」などという発言が、しばし見受けられます。

 その際には、一番最初に撮った写真をお見せしながらご説明をさせていただくのですが、ご本人様はあまり納得されたご様子もなく怪訝な表情を浮かべておられます。

 お送りする時間がこちらとしても迫っておりますので、いつまでもずっとその堂々巡りの押し問答をするわけにもいかず、「退所されたあと、もしお忘れ物として出てきましたら、きちんとご連絡いたしますので」という旨をお伝えすると、渋々ながらご了承されます。

 そしてお送りの際、また道中で「上履きを忘れた。ベッドの下に置いたままかもしれない。」と次の心配事へと移ります。

 お迎えの時もそうですが、お送りの際にも不安になる点がほとんど一緒なので、荷造りをしたスタッフに事前にきちんと荷物に入っているか確認をしたり、Sさん自身の目で確認をすることを徹底することにより、Sさんの不安点に関して自信をもって「忘れていないですよ。きちんと荷物の中に入っています。」とお答えすることができますので、それによりご利用者様も納得されます。

まとめ

 私が働いている施設では、地域柄もあり、個室より多床室の方が多く、Sさんも多床室です。その際に隣のベッドの人の私物を間違えて自分のところに持ち帰って使っていたり、床頭台の引き出しの中に入れてしまったり、ということが多くありました。

 また施設の物品等もよくお部屋の方に持ち帰ってしまって、一見するとご自身のものなのか、施設のものなのか、はたまた他のご利用者様のものなのか、分からなくなってしまうことがありました。

 その時、きちんとご入所の際に隅々まで持参された荷物のチェックをすることで、誰の所有物なのかが分かるようになりました。

 そして、何かしら貸出をした際には、その日出勤していないスタッフにも分かるようにきちんと「申し送りノート」に記載をし、どの職員がいつ退所の際のお荷物をチェックしても分かるようにしています。

 ですので、荷物のチェックは物盗られ妄想の対策と所有者の確認、2つの意味があります。

 今回の事例はショートステイという短期の関わりの中での対策になりましたので、出来ることにも限界がありました。物盗られ妄想の場合には「否定しないで本人に探してもらうように誘導する」などの王道的な対応がありますが、これをしている時間的な余裕がなかったということが反省点です。

 以前勤めていた施設ではお金をご家族から一定の金額預かって、お金を盗まれたと言った際にはそれを渡すという対応を取ったこともありました。いずれにせよ、これが正解!という対応はなかなか見つかりませんので、いつも手探りで介護を行っています。

[参考記事]
「物盗られ妄想の認知症高齢者の実例。ヘルパーに疑いをかける」

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