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一人暮らしの脳血管性認知症の男性が老人施設へ入所するまで

 

この記事は訪問介護のヘルパーさんに書いていただきました。

……………

今回は脳血管性認知症であるBさん(男性)のお話をします。Bさんは、沖縄県にある小さな島に長男として生まれました。ご両親が早くに他界されたため、妹や弟の生活の面倒をみながら、生計を立ててこられましたが、やがて、結婚され一男一女をもうけられました。自宅で「易占い」の仕事をされていたこともあります。子供達も立派に成長し、奥様と二人で暮らしておられましたが、奥様も他界され自宅で一人暮らしをされるようになりました。

血圧が高く医療機関で処方された薬を飲んでおられましたが、脳梗塞をおこされ歩行が不自由になられました。それに伴い、後に脳血管性認知症とも診断されました。自宅をバリアフリーに改装され、歩行器を使用し移動されています。老人性難聴と視力の低下もあり、そのうえ、物忘れのような認知症状も次第にみられるようになってきていました。

介護保険のサービスは、週に2回のデイサービス、そして毎日2回の訪問介護によるリハビリパンツ交換と洗濯、食事の調理配膳を利用されています。

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こだわりが強く、頑固なBさんの問題行動

●すべての料理に酢をかける
 若いころ「易占い」をされていたことも関係があるのかもしれませんが、食事に対するこだわりと儀式がありました。こだわりとしては、飲み水は容器の中に炭を入れて浄化します。

朝は、必ずピーナツパン、お茶、浄化した水です。水を飲む時は必ず、最初の少しをベットサイドのごみ箱に捨てるのですが、上手く入らず周りが濡れてしまいます。

また、食事前は15分ぐらいご先祖様への感謝、世界中の平和と繁栄をお祈りされます。この間にお茶が冷めてしまうのですが、冷めると淹れ方が悪いと注意されます。

デイサービスを利用されない日は昼食ぬきで、夕食はヘルパーが配膳していました。夕食は、レバーと野菜の煮物を毎日食され、週に2回は配食サービスのお弁当です。

ご飯以外のおかず、味噌汁すべてに400mlの酢をかけて食べています。あまりにも、酢をかけられるのでヘルパーが体調を心配し水で少し薄めるのですが、スーパーに「あんたのところの酢は薄い」と文句を言いに行ってしまいます。ご家族に聞くとご先祖などへのお祈りや水の浄化などは以前からだそうですが、酢をかけるのは脳血管性認知症になってからとのこと。

●季節がわからない!真夏にストーブ!
 沖縄でも冬はやっぱり少し寒いですが、だいたい一年を通して常夏の島です。しかしBさんは、季節や温度がわからなくなっているのか、真夏でもヘルパーが訪問すると部屋中ストーブの熱気がたちこめています。

上はシャツを二枚に冬用のジャンパーを身に着け、下にはズボンと冬用の靴下を2枚重ねで履き、毛布を頭までかぶっています。ご本人は寒いと言われますが、体中汗でびっしょりです。ヘルパーが説得して服を脱いでもらうまでが一苦労でした。

本当に寒い冬の日には、ベットに寝ながら電気ストーブを抱きかかえようとされていたこともあり、ヘルパーの訪問が遅れていたら、家事になっていたのではと冷や冷やしたこともありました。電気ストーブは危険なため、別室に移動させましたが、その後しばらくヘルパーが訪問するたびに「電気ストーブを探してこい」と言い続けておられました。

●便がきれいに拭けないため、部屋中が便だらけ!
 ポータブルと尿瓶を利用して排せつされていましたが、便がきれいに拭けていない状態で、リハビリパンツを履かずにベットに移動します。

その結果、シーツが便汚染され、その上に横になられるので、服も汚れてしまいます。手についてしまった時も気づかずにあちらこちらを触られます。戸や窓を開けておくのは物騒だからと部屋中の戸を閉め切っておられたので、部屋中ににおいが立ち込めていました。

たまにならよいのですが、お通じがものすごくよいBさんだったので、一日2回訪問するたび便処理をしていました。

ヘルパーだって嫌な時はある!

ADL(日常生活動作)の低下が進み、「排せつの問題」「火事の心配」などがでてきたので、ご家族も自宅でBさんが一人暮らしをしていくことはもう無理だと思うようになられ、老人施設へ入所をされることになりました。

ヘルパーは、利用者の選り好みをしてはいけませんが、やはり毎日訪問するたびに、部屋中便で汚染されていたりすると、「あの人の家に行きたくない」という気持ちが沸き起こってくるのも正直な気持ちではないでしょうか?

Bさんが利用しておられた訪問介護事業所でも、週間のシフトが出るたびに、「私ばっかりBさんのところに行かせて!」とヘルパーも訪問へのストレスがいっぱいでした。

老人施設入所前の最後の訪問で、頻回にBさんの訪問にあたっていたヘルパーが担当になったのですが、Bさん自身はこれ以上の在宅介護は無理だと入所に対する覚悟も決めておられ、昔の苦労をした話などをしみじみ語ってくださったそうです。

本人が入所されてからも、「Bさんどうしているかな?」「施設のスタッフ困らせてるかな?」「会いたいね」とヘルパー同士よく話題にのぼります。訪問している時は、嫌で嫌でしょうがない時もありましたが、離れてみるとやはりさびしく、なつかしさがこみ上げてくるそんなBさんです。

[参考記事]
「脳血管性認知症ってどんな症状があるの?」

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