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転倒の危険のある認知症の人への対応事例

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 認知症高齢者の中には、転倒の危険があることが分からずに、自らが思うように行動して、怪我をすることや、事故に遭ってしまうことがあります。周りからみれば「危ない」と思うような行動を、どうして行うのか。周りがどう接すれば、転倒の危険もなく安全に過ごせるのか。Aさんの事例を通して、考えてみます。

Aさんの人物像と日常生活

 Aさんは92歳になる男性で、小規模多機能型のグループホームで暮らしています。5年前に認知症の診断を受けています。足腰が弱く、外出時は車イス、室内は人の腕をつかんで、一緒に30メートル程度歩くのがやっとです。普段、リビングの定位置のイスに座って、テレビを見ることや、大好きな将棋や動物の本を読んで過ごしています。

 そんなAさんは、1時間ごとにイスから立って一人で歩こうとします。一人では歩けないので、誰かが声をかけなければ、Aさんは転倒してしまいます。その際に、どのようにAさんと関われば、Aさんが安心して座って過ごしていけるのか、考えます。

立ち上がった際の、対応方法

 「危ないから、座ってましょう。」Aさんが立ち上がるのを目撃した際に、周りの人がそのように声をかけます。するとAさんは、「わかった。」と言い一度イスに座りますが、また5秒後には立ち上がります。『座っていてほしい周り』と『立ちたいAさん』の想いがすれ違うため、何度も何度も、このやり取りが繰り返されます。これでは、お互いが苦しいし、いつ転倒するか分かりません。

①なぜ、立ちたいのかを聴く。
 そこで、立ち上がったAさんに、「どうしましたか?」と声をかけてみます。するとAさんは「切符がないから、探しに行きたい。」と。『立ち上がって今からしたいこと』を答えてくれます。Aさんは、昔、毎日のように電車を利用していた人なので、(Aさんの頭の中では)今から電車に乗って、家に帰ろうとしていたところでした。そこで切符がないと思い、探すために立ち上がっていたのでした。認知症による見当識障害があり、自分がどこにいるかが分かっていない状態です。見当識障害になると今いる場所もそうですが、今が何時なのかの時間の感覚もずれてきます。

②どうすれば困りごとが解決するかを、一緒に考える。
 手元に切符がなくて、困って立ち上がるAさんに、「切符を探してきましょうか?」と、声をかけます。すると、Aさんは「お願いします」と言います。そこで更に、「今から探してきますので、ここでお待ちください。」と声をかけます。Aさんは「わかった」と納得して、その場で待つこと(座っていること)ができます。数分してから、Aさんのもとへ行き、切符の話題には触れず、Aさんの好きな将棋や動物の話をします。切符を探してたことから意識をそらして、好きなことを考えて楽しい気持ちで過ごしてもらいます。そうすることで立ち上がることもなく(転倒もなく)、安全に過ごすことができます。

 全てがこの方法で成功するわけではありませんでしたので、実際に駅に行って切符を買ってきました。そして、「今から探してきますので、ここでお待ちください。」と声をかけるまでは先ほどと同じですが、少し経ってから本物の切符を渡します。そうしたところ、「ありがとうございます。助かりました」とお礼を言い、大変落ち着きます。

 認知症の人に対して、ごまかしているような対応ですが、一番気にしなくてはいけないのは本人の安全です。転んで骨折でもしてしまったら、さらに認知症が進行してしまうでしょう。

転倒防止のまとめ

・座っていてもらおうと考えずに、どうして立ち上がるのかを聴いてみる。

・どうすれば立ち上がることが解決するのかを一緒に考え、本人が納得(安心)して座っていられるように話し合う。

・立ち上がる理由が、直接解決しないものであれば、間をとって、違う話題を振る。
(トイレや、何か実際にあるモノが欲しい等、すぐに解決できることは解決して納得してもらう。)

 どうして立ち上がるのか、どうすれば解決して安心して座って過ごせるのか、そこに目を向けて本人と話すことで、転倒することもなく過ごすことができます。認知症だから言っても分からないと思い、転ばないように行動を制するだけで終わらせてしまいがちですが、「なぜ、どうして」に注目して対応していきましょう。

[参考記事]
「夜間に徘徊をする認知症の人への対応事例」

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