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夜間に徘徊をする認知症の人への対応事例

 

 この記事では夜間に徘徊を繰り返すグループホームの入居者に対する対応事例を紹介します。

 Sさん(80)はアルツハイマー型の認知症を持った女性でした。体はいたって元気なため一人で歩くことができますが、お手洗いのやり方やお食事など、物事を実行する判断力や実行機能に支障が出ていました。また癇癪を起こし、近くにいる人を叩いたり罵ったりすることもありました。感情の高ぶりを抑えるための漢方薬も服用していましたが、あまり効果がありませんでした。

 日中にお嫁さんが家で一人で看るには心配なことが多かったため、息子さんの要望でグループホームに入居することとなりました。

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夜間になると廊下を徘徊

 日中はケアスタッフが注意して見守り、落ち着いた環境で過ごせるように努めたため、他の入所者の方への暴力・暴言などの行動はそれほど出てきませんでした。Sさんはもともとお話好きな性格でもあるため、他の入居者の方とも打ち解け、会話やレクリエーションを楽しんでおられました。

 しかし夜になりお部屋に戻ってから1時間ほどすると廊下に出てこられ、ユニット内を徘徊を始めます(徘徊は認知症の周辺症状)。スタッフがお声かけすると「もう帰らなきゃ」「出口はどこなの」「息子の職場が近いと思うんだけど」などとおっしゃり、そこらじゅうにあるドアに手をかけてしまいます。

 場合によっては他の入居者のお部屋にも入ろうとしてしまうため、ケアスタッフは巡視を行いつつ注意して見守らなければいけない状況でした。他の方のケアや排泄介助などを行っている間にSさんが何をするのか分からないので、ケアスタッフは緊張して見守りを行っていました。「今日はここにお泊まりすることになってるんですよ」とお声かけし、一度は納得してもらえるものの、数分後にはまた同じことを繰り返してしまうのです。

徘徊への対応

 初めはどう説明しても同じことの繰り返しになってしまい、Sさんが眠くなる真夜中過ぎまで見守りを続けるしかありませんでした。しかしそのような生活が続くと睡眠時間がずれてしまい。生活パターンが昼夜逆転する恐れがありました。認知症の人は見当識障害により昼夜の区別がつかないこともあり、昼夜逆転はよく起こりがちです。

 そこでケアスタッフの対応としてはSさんが徘徊を始めたらリビングのテーブルの方にお連れし、ほうじ茶をお出ししながらお話を聞くことにしました。ご家族のこと、Sさんの昔話、地元の話などほとんどが他愛もない世間話でした。しかし話しているうちにSさんはリラックスし、いつもよりも早い時間にお部屋に戻り、ベッドでお休みになっていただくことができました。ケアスタッフと世間話を楽しむことで高ぶっていた感情が穏やかになり、眠気を誘ったのかもしれません。

 またある時には偶然目が覚めてしまった他の入居者の方も輪に加わり、さしずめ「夜のお茶会」となったこともありました。会話を楽しんでいる間はSさんの帰宅願望は出てくることはありませんでした。そのうちに生活パターンも改善され、Sさんは規則正しい生活を取り戻すことができました。

無理に誘導せず、リラックスしてもらう

 私の施設はユニット型で人数も少なかったため、このような対応が可能だったのかもしれません。認知症の方が夜間に徘徊する場合、少なからず心のどこかで不安を感じています。認知症の見当識障害のため、今いる場所が分からないなどが原因です。どこにいるのか分からない場所で寝てくださいと言われても不安ですよね。

 もう一つは寂しさも感じていたのだと思います。今までは息子さんやお嫁さんと暮らしていたため、寂しさは感じなかったでしょうが、ここはグループホーム。通常の老人ホームよりは入居者と近しい関係を作れますが、やはり家族とは違います。

 ですので、夜間、徘徊を始めたらまずはリラックスした雰囲気でその方を受け入れ、休憩がてらその方との交流を楽しまれてはいかがでしょうか。会話することでその方の気持ちが満たされれば安心して眠りについていただくことができます。もし夜間が難しいのであれば、就寝時間の直前にそう言った時間を設けるのも一つの方法です。

[参考記事]
「認知症による夜間徘徊の原因とそれに対する対応事例」

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