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小規模多機能ホームへの通いを拒否する認知症の女性に対する対応

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私が小規模多機能ホームで働いていた頃に出会ったMさん(77歳女性)のお話です。
私が勤めていた小規模多機能ホームの概要を簡単に説明しますと、登録人数29名の地域密着型施設で、登録された利用者様は訪問・通い・宿泊のサービスを同一施設で受けることができます。

小規模多機能ホームへの通いを勧めるが拒否

Mさんが小規模多機能ホームを利用に至った経緯は、同居されているお嫁さんの相談からでした。
Mさん、Mさんの旦那さん、息子夫婦、お孫さん1人の5人暮らしをしており、Mさんは日常的に家事や畑仕事をしていたそうですが、5年前に旦那さんが他界。
旦那さんを亡くしたことへの喪失感からか、ちょうどその頃から物忘れ等が酷くなり、家のことが出来なくなってしまい、家族の介護(主にお嫁さん)を受けながら生活していたそうです。
最近になってお嫁さんに対しての暴言や財布を盗られた等の被害妄想、自宅にいながら「家に帰る」と外に出て帰って来られなくなるといった問題行動がみられはじめ、家族の負担が大きいのでなんとかならないか、との相談でした。
とりあえずは家族の介護負担軽減のため、小規模多機能ホームに通いで利用してもらおうとケアマネジャーが自宅で本人とお話をしましたが「なんでそんなところに行かなきゃいけない」と断固利用を拒否されました。

小規模多機能ホームへ通うことへの拒否に対する対応

そのため、まずは職員とMさんの間に「顔見知りの関係作り」をしようということで、自宅へ訪問して世間話をする、ということから始めました。
私はMさんのいる地域の出身で、Mさんのことはぼんやりですが知っていました。
Mさんのところに行き、私の祖父の名前を出すと、
「あんた、〇〇さんの息子か!!立派になって!!」
と好感触で、そこから世間話に発展させることができました。
息子じゃなくて孫なんですよと何度か説明したのですが、「ありゃ、勘違い恥ずかしい。」と一度は間違いを正すのですが、少し話をするとまた息子になってしまうので、まあいいかと息子で通しました。

何度か訪問を繰り返し、話は弾みますが、小規模多機能ホームに来るのにはやはり消極的でなかなか通いにまで持ち掛けるまでには至りませんでした。
そこでお嫁さんに話をし、私の祖母を一緒に連れてきて話をしてみようと試みました。
私の祖母とMさんは顔なじみなのですが、家が離れているため最近は会うこともなく、疎遠になっていたそうです。
祖母は快諾してくれ、一緒にMさんの家に行ってみました。
Mさんは祖母のことを一目で分かったようで、話が弾んでいました。
私たち職員と話をするときは同じ話を頻繁に繰り返すことが多いのですが、不思議なことに祖母と話しているときはそれをあまり感じません。
というか、よくそんなにネタがでてくるな、というくらい二人ともよくしゃべります。

あとから祖母に話を聞くと、もともとMさんは社交的で、友達も多くておしゃべりな人だとのことでした。

カンファレンスを開く

これらの情報を持ち帰ってカンファレンスを開きました。
Mさんは本来は社交的な性格であるのに、
旦那さんを亡くした喪失感によって認知症になり、それまであった人付き合いがなくなってしまったため更に症状が悪化してしまったのではないかと考えました。
そこでMさんの社交的な性格を生かして、「職員だけでなく、地域住民との関係作りをしよう」と具体的な内容を職員間で話し合いました。
私の働いていた小規模多機能ホームにはグループホームが併設されており、そこには年代や家が近い利用者さんが何人かいたので、もしかしたら顔見知りなのではと思い、その方たちも招いてお茶会を開いてみようと考案しました。
私の祖母にも協力してもらい、「老人会のお茶会」という名目で施設に来てもらいました。
グループホームの職員にも協力してもらい、合同でお茶会を開催してみたところ、案の定皆さん知り合いだったので思い思いに話をしていました。

それからのMさんは職員の誘いを断ることなく小規模多機能ホームに通われるようになりました。
更にグループホームの利用者さんにも良い刺激になったようで、Mさんの利用の日には小規模多機能ホームへ来て、お話をしたり、一緒に昼食を食べたりするようになっていました。

更に更に私の祖母にとっても良い刺激だったようで、近所の友達を誘って小規模へ遊びに来るようになりました。
その辺りからさすがにスペースが足りなくなったので、管理者にお願いし、「地域貢献」という名目で小規模多機能ホームとグループホームの間に談話スペースを整備し、誰でも使用できる空間を作りました。
発端はMさんのケアが目的でしたが、今では「地域の憩いの場所」になっています。

お嫁さんが言うにはそんな生活を続けていくうちに、Mさんの家庭での生活にも落ち着きが出てきたとのことでした。
人付き合いが増えたことで、これまでの孤独感や不安感が緩和された結果ではないかなと思います。
物忘れは相変わらずだそうですが、暴言や被害妄想はほとんどなくなったそうです。

その後しばらくして、Mさんは心不全でお亡くなりになりましたが、談話スペースは今でも活用されています。

[参考記事]
「認知症の人がデイサービスに行かない理由とその対応」

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