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徘徊によりトラブルを起こす認知症入所者に対する対応

 

特別養護老人ホームに入所して3ヶ月になるSさん。年齢は78歳、男性、要介護3、レビー小体型の認知症です。

症状をまとめますと
〇独歩可能で物静かな性格の方ですが、怒ると大声を出したり暴力が見られます。

〇日課や場所の理解はできません。

〇意思の疎通は困難ですが、声かけに対して『はい』や『そうですか』等の返答はあります。

〇食事はスプーンを渡せば見守りと声かけのもと自力摂取できます。

〇物の理解も難しいので、異食行為もあります。

〇徘徊もあり、昼夜逆転も見られます。

午前中はうとうとリビングの椅子で眠り、午後からリビングや廊下をぐるぐる歩いています。夜一睡もせずにぐるぐる廊下やリビング、居室内を歩くことは日常でした。

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徘徊や異食によって起こる他入居者とのトラブル

Sさんは、場所や物の理解が困難なため、徘徊していても他入居者の居室に入ってしまったり、リビングでも自分の席が分からないため他入居者の椅子に座ってしまいます。そのためいつも他入居者から苦情が出てしまいます。職員が見守りしていればすぐに対応できるのですが、他入居者の対応で目を離している間にトラブルになってしまいます。

例えば夜間Sさんが徘徊をして女性入居者の居室に入ってしまったことがありました。女性入居者は大きな声で『誰か来てー』『こっち来ないで』と叫んだため、気づいた職員が駆けつけましたが、その時Sさんは怒った表情で女性入居者に大声で何かを叫んでいました。それを期に、女性入居者はSさんが怖くてここに居られないとなってしまい、別のユニットへ居室変更されました。

その他にもトラブルはあります。Sさんは食事後テーブルにあったおしぼりを箸でつまんで食べようとしていたことがありました。それを見つけた男性入居者が『おしぼりなんて食べてなにやってんだ!ダメだろ』と強い口調で言いました。何を言われているかは理解できないSさんですが、なにか嫌なことを言われている感覚はあります。

さらに、男性入居者がおしぼりをSさんから取りあげたので、Sさんはすごい剣幕で怒り、大きな声で何かを叫びながら男性入居者に殴りかかりました。男性入居者には怪我はありませんでしたが、止めに入った職員は内出血ができていました。

徘徊をどのように見守るか

Sさんの徘徊は見守りと常時の所在確認で対応していましたが、他入居者とのトラブルが起きてしまう事は問題のため、カンファレンスを行い今後の対策を話し合いました。

Sさんは入所前は病院に入院していました。それ以前は長男夫婦と生活していましたが、徘徊や意思の疎通が困難で一緒に生活することができなくなりました。家族は、病院で手足を縛られ、常に大声を出して暴れているSさんの姿を見ていたので、施設に入所してからのSさんの様子にとても安心されていました。

施設では、できる限りSさんの徘徊を見守る形をとり、Sさんが精神的に安定した生活が送れるようにしたいと考えました。そこで2つの対策をたてました。

1つ目は、Sさんのリビングでの席を変えることにしました。今まであまり考えずに席を決めていため、Sさんの行動が気になる他入居者の方とトラブルになっていました。変更する際は、Sさんに近い席の他入居者はできるだけSさんの行動が気にならない方に変更しました。

2つ目は、再度Sさんが徘徊を始めたときには見守りを徹底することを職員に周知しました。職員もSさんが徘徊するのは日常のことだと思い、見守りが不十分になっていたからです。また、看護職員や環境職員にもSさんの状況を周知しました。この対策で、職員が他入居者の対応をしている時は、看護職員や環境職員がSさんの様子を見守る体制ができ、他入居者とのトラブルは少なくなりました。

その後Sさんの認知症は急激に進行し、歩行や食事が一人ではできなくなりました。皮肉ですが、その結果、他入居者とのトラブルはなくなりました。日中はベッドで寝ている生活を送っています。

[参考記事]
「認知症による徘徊の対応には徘徊の目的を知ることが第一」

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